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◆ 5・過去(前) ◆


 未だ警戒を解く事のないライラ。

 部屋の隅に退避していたスライ先輩が戻ってくる。


「共闘は良い案だ。だが全て説明はしてもらうぞ」


 もちろん、望む所である。

 死に戻り人生の『始まり』から話したっていい。もっとも、それらは『大前提』を受け入れてもらった後の話だ。一番の難関でもある。


 私は大きく息を吸い込み、吐き出す。

 今までの色々が走馬灯のようによぎる。意を決して、はっきりと伝わるように声を発した。


「私は、死なないのよ」


 先輩だけではない。ライラも、ミランダも奇妙な顔をした。


「この状態で嘘言う気はないから、最後まで聞いて。まず私は性悪天使に刑罰を課せられてる。それは『箱庭刑』と言って、死んでも、基点となる時間軸に戻されるというものよ」


 ここまでのぶっちゃけ話をしたのは始めてだ。

 昔は自分の置かれている状況も分からなかった。相談という名目で話し、精神を病んだと判定され、病院や神殿に送り込まれる事となった。苦い過去だ。

 だが、今回は全てを把握している。


「この刑は天界では有名みたい。罪人の改心を迫るのが目的。何度も何度も同じ時間に戻されるのよ? 誰だってイヤになって我が身の行いを振り返るわ。私の場合は毎回、十六歳の誕生日、ミランダが起こしに来る直前ね」


 私は置かれている状況をほぼ正確に理解しているし、伝える事もできる。そして証人もいる。


「おう。ソレについては俺様が保証するぜ」


 私の祈りが通じたのか、ルーファが応じた。

 悪魔の言葉がこんなにも心強く感じる日が来るとは――人生分からないものだ。



◆◇◆



 私は我儘な子供だった。

 それも当然かもしれない。


 家は大貴族家で父はそれなりの地位にいるし、私の容姿だって自分でも自覚する程度には悪くない。名実ともに十六歳だった頃は、むしろ可愛いとすら思っていた。

 実年齢八十になった今、なんでそんな恥ずかしい事を考えられたのか頭を殴りたい。

 まぁ、思春期なんてそんなものだ。そうに決まっている。


 地位、金、容姿が揃っていたのだから、当時の私は本当に手が負えなかったと思う。よく婚約者とはいえ、カエルはついてこれたものだ。


 いじめの扇動を始めとして、私の被害を被った方たち全てに謝りたい。


 いや実際に、死に戻り人生の初期に謝って回った。その後、彼や彼女たちの人生がよりよくなる手助けとして基金も設置し、色々と便宜(べんぎ)も図った覚えがある。

 逆に腰を低くしすぎた所為か、相手側がされた事を踏襲(とうしゅう)して復讐めいた状態になったこともある。


 長い人生だ。

 色々とあった。


 結局頭を下げた所で、一度つけた傷は治らないと知った。それを償うには神に(すが)るしかないと、神に救いを求めた時期もある。

 死んでは戻るのだから、神の怒り――神の教訓だと信じていた。


 結果は惨敗だ。

 どのルートを辿(たど)っても『死』は(まぬが)れないし、『死』は訪れ、『巻き戻る』のだ。


 この絶望は体感しないと分からないだろう。



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