◆ 29・なぐりあい(中) ◆
「古流派、ですって?」
不機嫌と混乱を煮詰めたような声で応じるミランダ。
私は大きく頷いた。
その混乱はもっともだと思ったし、ライラ以外は驚いている。ここにカエルがいたら彼も納得したかもしれない。
「ずっと在ると思うな金と権力。これが私の人生……ウン十年の結論よ」
「いや、あんた十六歳でしょうが!」
ミランダのツッコミが入る。
元々、私は肉弾戦が得意だった。
手斧を嫌がる私への淑女教育と、母が引き合わせたのが師匠だったのだ。
もっともその頃は、真面目に教育を受けなかったし、師匠の方でもカエル王子が武力を持つ気はないという事で消沈していた。
なにせ代々王家の指南役をしてきた人だ。王家からのお役御免の雰囲気に呆然としていた。おまけに教授する相手が侯爵家令嬢とくれば、そのショックも大きかったろう。
その後の死に戻りで師匠の所に通いつめたり、道場に通うようになり免許皆伝まで達したのだが――。
でもほんと、手に職ならぬ技を身につけて置くのは大事ね……、傭兵紛いの事でもできたしね!
私のこの殴り合いの強さを知る者は、ここ数カ月行き来をしていたカエルと、腕の確認にこっそり拳を交えたライラくらいなものだ。母とて、ここまで腕が上がっているとは知らないだろう。
「姉様、凄いです!」
フローレンスの声はちっともありがたくない。
已むに已まれず極めた道なのだから――。
しかも師匠みたいに、天賦の才がってパターンでもないし。そしてとりあえず、服……着替えたい。
「まぁいいわ……面白いじゃないの。それで私と殴り合うっていうの? 馬鹿なの? 悪魔よ私」
ミランダの体が溶ける。
液状化した彼女の体が黒い無数の弾を放つ。
集中して見れば分かる。それら一つ一つは何の属性も持っていない円錐型。
「〈 スコターディ 〉」
闇を纏った拳が空を切る。
続いて蹴りが空気を揺るがす。
「悪魔……未、まん、でしょうが!」
闇の作った軌跡に撫でられ、弾は流れる。
落下したそれらは、床にいくつもの穴を開けた。私には一つすらも掠っていない。
彼女の攻撃が、ルーファの炎で消された時から可笑しいと思ってたのよ。まだ属性とかもないんだわ。ある意味、ただのモンスターね。
炎の魔王に捧げたのだから炎の悪魔になると思いこんでいた。どうやらまだ未完成品のおかげか、彼女に属性はついていない。
……私が一番怖かったのが、いきなりの爆死や焼死よ。魔法ぶっぱなされちゃ、避け方も何もないし。物理でくるなら、……まして、無属性ならイケる!
「仕返しの時間よ……ミランダ」
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