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◆ 21・堕天 ◆


 心を読む天使たちをチラリと見る。

 この場には二人も天使がいるし、私が気付かないだけでもっと多くの天使に見られている可能性もある。何より、堕天させると決めた事はすでに二人には伝わっているはずだ。

 おっさん天使は相変わらず目を閉じ、こちらの事などどうでも良さげだ。



 ってか、めっちゃうるさいっ!!!!



 こちらは透過しているお陰で被害0ながら、一段階下の世界ではライラとスライ先輩の魔法が飛び交っているし、ルーファが防いだりなんだりしている。



 いや、マジで急がないと、ヤバいな……この際、天使も悪魔もみんな信用できないし、言ってる事もどこまで本当か……。

 でも、ルーファは『アレを唱えれば、お前は一歩終焉(しゅうえん)に近づく』と言った。そしてソレは本当の事だった。それなら、その後に言った事も信じていいんだろうか? 私はあの時、なんで呪文を唱えた?



 ルーファの目に真実を見た気がしたからだ。


『約束してやる。只では終わらせない。俺様も一緒に探してやる』


 あの言葉は本当だと思えた。今まさにそこらで実害を及ぼしている存在で、物騒な二つ名を持つ元勇者の悪魔を信じるしかないのは笑える。それでも――。


 頭痛に苦しむエルロリスに手を差し出す。


「一緒に唱えて」


 言ってから何か足りない気がして、言葉を探す。そんな私の手を彼女のぬくもりが包む。彼女は天使らしい微笑みを浮かべている。


「うん……一緒に下に行く」


 足りなかった言葉を彼女が補ったのだと分かった。

 彼女は身体をぐったりと私に預ける。


「わ、わたしね、ちがうよ。シャーロットじゃないってわかる。シャーロットはあなた」



 いや、おっさんの話聞いてた??



「うん、聞いてたよ! でもね、分かるの……。シャーロットじゃないんだよ。シャーロットの体を借りてただけ……でも、多分わたしたちは、まだ……一緒にいなきゃいけないから」

「まぁ、そうね?」

「……ねぇ、シャーロット……もう少し、一緒にいてね」



 ってか、いなくなられても困るし?



 そこで彼女は兄を見る。


「シーア、……少しだけ、思い出したの……。だから、……ごめんなさい」


 おっさん天使は目を閉じたまま肩を竦める。


「行きな」


 彼女が何を思い出したのか、なぜおっさん天使が堕天させる事を許しているのかは分からない。だが、一刻も早く、ルーファを止めなければならない。

 開きかけた私の唇に彼女の手がかかる。


「シャーロット……、ルフスに伝えて。『もういいんだよ』って」



 なんだ、それ?



 問う暇はない。

 彼女の唇が動く。


「 【 エルキヤ・エルティア 】 」



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