◆ 12・天使の声(中) ◆
「その、ルーファの野郎がなんて??」
「ん?」
便宜上の名前グレイス改め『アーラ』は首を傾げる。
「だーかーら! そのルフス君はなんて言ってた?! 何? アイツ私がこんなトコでむなしい思いしてる頃、恋人といちゃいちゃしてたって事!? 殺す、絶対殺すし!?」
「落ち着いて、いっぱい新しいコトいわれても、よくわからないよ……」
震える小鹿かお前は。
いや、分かる、分かるよ? うん、お前は可愛い。可愛いと思いますわ、はい。でもね? だからって相棒もどきの私がここでこんな状態なのに、自分はキャッキャウフフしてやがったの?
「つか、あんたが『アーラ』なら、天使なわけよね? 確かルーファ、アーラは天使だって言ってたはずだけど、アレって頭お花畑の妄想じゃなくて、マジの天使? なんで天使がココにいるの」
「天使? 天使かは分からないけど、さっきフローレンスに抱きしめられて、それから……今、かな?」
うん、全くわからん。
「つか、暗すぎるのが大問題。火とか起こせたらいいのに」
「あ、それなら」
パタタと羽音のようなものがする。
ぼんやりとした炎が生まれている。お互いの顔を照らし出す炎がフルリと震えた。
「どう?」
炎がしゃべる。
「どうって……あんた燃えてない?」
「あ、ううん。炎になってみた」
なってみた?
なってみたいと思ってなれるの? だったら私ここから出たいし、さっきからずっと祈ってる。
「それ分離できないの? あんたはあんたとして存在してって感じの」
「私が光る?」
「そうね。お願い。眩しすぎない程度に」
ボウッと炎は燃え上がり、続いて白光美少女に変化する。
見覚えのある顔と姿だ。
私じゃん!!!!
いや、まさにけぶるような金髪に青い目ってエルロリスじゃん!! 元、私! いや、待って待って、やっぱエルロリスが『アーラ』なわけ?! え、私って元ルフスとラブラブだったって事? あんなクソ残念男と?! イヤだ、殺して……。
「どう?」
吹き荒れる内心を抑え込み、彼女を見遣る。
そうよ、これが私と決まったわけじゃないんだわ。だって別々に存在してるじゃないの、今!
「エルロリス、よね?」
「え?」
「あんたの本名よ!」
「そうなの? 私、アーラと思ってた」
「……うん、あんたの能天気さ見てわかったわ。あんたは私じゃないね。認めませんとも。まぁいいわ。じゃ、今までのあんたの記憶、全部話して。歩きながらだからね! どっかにまだ出口があるかも疑惑残ってんだし」
歩き出す私の横をちょこちょこついてくるアーラ改めエルロリス。
「話す、うーん、目が覚めたら記憶なくなってて、王子様なルフスが面倒をみてくれて、歩けるようになって」
「エルロリス待って、あんたの話つっこみ所しかない。ルフスが王子?」
「うん、カエルだったんだって。でも聖女の力で人間に戻れて、今は人間の姿のルフスだよ」
いや意味が分からない。
ルーファ=ルフスとアレックス=カエルは別々の個体だ。そしてカエルは王子だが人間には戻りたくないと言っていたし、ルーファは悪魔だ。
つまりルーファは国の乗っ取りでもしたかったの??
ってか、ルーファが王子の真似事を始めてるならカエルはどうなったの?
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