◆ 8・悟らせたら終了 ◆
頭が重い……、久々に感じるこの最高に体調の悪い感じ……。
身体を起こし、頭を押さえる。周囲の暗さから考えて、まだ夜中――あれから、さほど時間は経っていないようだ。
「チャーリー、たのしかった?」
耳元で堕天使が囁く。
顔を上げれば、フローラが浮いていた。キラキラと輝かせた顔が何とも憎たらしい。暗闇の中でも堕天使の姿はかすかに白光していて、よく見える。
「あんた……私の頭に、何したのよ」
「イイモノを入れてあげたの! だいじょーぶっ。すぐにいたみもなくなるから」
やっぱこの痛み、あんたのせいか。……って、大きな声出さないでよ……、余計に気分が悪くなるわ……。
「実害、今まさに出てるんですけど?」
「あはは!」
愉快そうに笑うフローラ。
視界にヌッと白い手が突き出された。辿って視線を向ければ、暗闇に慣れた目にエイベルの顔が写った。
そうだった、帰ってきたからこうなったんだったわ。
「おなか、すいた」
我が道を行くエイベルらしい言葉だ。
……さっきまでそれなりに、普通に、話せてたのにね……。言葉の壁ってすごいのね……。
「もうちょっと待って」
「いつ?」
「私の朝食後にして……」
この体調不良で血を抜かれたら、倒れる自信がある。
「ねーねー、チャーリー! なにか見つかった? ハッケン、ハッケン!」
「……そうね、魔王の食事の世話をしっかりしなきゃって事かしら? 聖女に負けちゃうしね……」
彼女は大仰に頷く。
「それはとってもダイジね、チャーリー! でも、なにをたべさせるの? ニンゲンとおなじものは食べないよ」
心は無に、声は大にして答える。
「モンスターよ!」
「……たりる、のかなぁ?」
んーっ、と首を傾げる少女から目を反らさず、気合を込めて尚も言う。
「たりるまで、狙っていくわ!」
「ねらう?」
「そうよ! ここって、守護神とか言われてるモンスターがいて、私の国のモンスターとはレベルが違うっぽいじゃない? そういうのを狙って食べさせていくって感じよ! もちろん! エイベルが栄養失調にならないように、私の血もあげる予定」
フローラは興味を失ったように「がんばってねー」っと気のないの応援を口にした。
彼女がくるりと回って部屋を出ていく様を見てから、私は再度ベッドに倒れ込む。
「オネーサマ?」
「エイベル、私の言葉は伝わってるのよね?」
「うん」
血は、どれくらい必要かな? 少なくて済むといいんだけど……。
「よんぶんのいち、くらい」
そう……、それはキツすぎるわね。
「ん?」
今……私、声……??
驚きながらも体を起こすほどの元気はない。
視線だけを向ければ、彼は頷いた。
「はっきり、くる」
うわぁ、それは困ったわ。あんたの悪口言えないじゃない。
彼は肩を竦める。
「気にしないし」
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