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◆ 5・繰り返す人生 ◆

 他人の半生を外側から見続けている。

 どこにでもいる平凡な母子の人生だ。


 母親は私も知っての通り兵士らしく、仕事に行く時にはシッターが雇われている。このシッターも普通のどこにでもいるバイトの町娘だ。

 少しだけ違う事と言えば、彼女たちが赤子に与える飲み物に聖女の血が混じるくらいで、他に怪しい点もない。


 正直、私は飽きていた。


 すでに十数回目の、親子の出会いを見ている。


 彼らの穏やかな生活が突然停止し、最初に振り戻るせいだ。

 もちろん、理由も分かっている。

 私だ。

 きっと私が死んだのだ。


 一回目は驚いた。

 周囲の景色がピタリと止まり、世界が光って――次の瞬間には、また母親が彼女をエイベルを呼んでいた。今までこうした風な『戻る』瞬間を見た事がなかったため、何が起きたのか分からなかった。

 内部で会話をしていたエイベルも、何度呼びかけても返答がなく、存在すら感じられないほどだった。

 やがて――『あぁ、オネーサマ……そうだった』という言葉で、理解した。

 彼もリスタートで一瞬、記憶が飛ばされたのだと。


 何度も繰り返すうちに次第に色々、想像できた。



〈エイベル、あんたの記憶が壊れたのって、私のリスタートに巻き込まれたせい?〉

 さぁ。

 でもそうかも?

 前の記憶もどんどん減っていったし、こっちの事を覚えようとしてもうまくいかなくなったし。だんだん、どうでも良くなったよね。

 また振り出しに戻るなら、何したっていいよなって感じにもなったし。



 聞き捨てならない言葉だ。



〈まさか、あんたを人殺しに踏み切らせたのって……〉

 うん、振り出しに戻るならいいかって殺したら、戻らなくなった。



 思い出すのはおっさん天使の言葉だ。

 私の赤子スタート計画をとん挫させた理由が、記憶云々の支障がどうのと言う話だった。



〈あれ、私の事じゃなくて……あんたの事だったのかも〉

 天使の事は分からない。

 オレはこの世界になじめてないんだと思う。

〈でも、古い本は読めたじゃない?〉

 あれ、多分オレの元々の使ってた言葉だと思う。……かなり記憶壊れて、はっきりは言えないけど。あぁ、でも……オレが言葉、通じてないって、あの王子は分かったみたい。

〈アレックス?〉

 うん。

 それで、なんか特殊なタリスマン取ってこいって言われて……。



 つまり、アレックスのお使いは悪役や魔王云々の問題に関わる事ではなく、普通に円滑な生活の為のお使いだったわけだ。

 確かに、言葉が通じないのは辛すぎる。

 ただ、この子がガキでバカなせいと割り切っていたが、こうして話してみれば普通に普通の、それなりの年齢の人物に感じる。



〈で、今はソレを使ってるのね?〉

 あの堕天使が、あんたに埋め込んだ。

〈うめ……こん……????〉



 額に突き立てられた手を思い出す。



 だから、今後は伝わるんじゃない?

 あぁ、それと、タリスマンには面白い効果があるって、あの王子が言ってたっけ。



 なおも、もちゃもちゃと言う彼の言葉は右から左に流れていく。

 そんな事よりも現在、生身の身体に可笑しなモノを埋め込まれたらしいのだから、他の事など些細な問題だった。



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