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◆ 26・猶予は三日 ◆

 戻った私は早速、アレックスにぶちまけた。

 もちろん与えられた客間に戻ったわけだが、どういうわけか彼は私の部屋にいて――お決まりの『大丈夫』問答が始まりかけた。

 急に姿を消した私を探していたと言うのを押しとどめ、こちらの流れを説明する。


 眩しい朝陽。

 半分徹夜の身には堪える。


 だが仮眠すら取っている暇が惜しい。

 敵は味方――植物とか可笑しなモノばっかりだが――多数なのだ。こちらとて仲間を募り、さっさと協力を得るのが一番だろう。

 その中でも、なんだかんだで信用度最高値をたたき出すのがこの男である。

 目の前で難しい顔をしているが、きっといい案なりアドバイスなりを提示してくれるはずだ。


「チャーリー、これは問題だね」

「そうでしょう? それで?」


 無駄な問答はいらない。欲しいのは結論だ。


「つまり三日のうちに、今のチャーリーでも『出来る』証明をしなきゃいけないんだよね? 悪役として……」

「そうよ」

「正直、難しいかな」



 何よ、それ。今の私じゃ無理だって言いたいの?!



「あんたまで……やり直せって言うの……?」


 絶望気分で問いかければ、彼は首を振る。


「違うよ、チャーリー。ボクはいつだってやり直して欲しいなんておもった事ないよ。難しいって言ったのはね、ゴールが曖昧だって事だよ」

「……無差別殺人、求められてんじゃないの?」


 彼は呆れたようにため息をつく。


「彼女の求めるゴールは彼女の感情で成り立っていて、余人の合理を求めてないんだよ。彼女が白と言えば黒も白になる。そんな曖昧な基準をクリアするのは無理だよ」

「じゃあ、どうするのよ……このままじゃ、私、殺されるし! あんたは知らないだろうけど、ホント、マジでイヤなのよ! 死ぬのはっ」

「まぁ……誰でもそうだとは思うけど……」

「はぁ?!」

「いや、えっと……ごめん。あー……うん、そうだよね、イヤだよね、えーっと……うん、一つ方法がないでもないよ」



 だったら、ソレをさっさと言いなさいよ。



 私の言いたい事を理解したのか、彼は続ける。


「フローレンスを捕まえるんだ」

「……フローを? 意図は?」


 そんな事をしたところで、三日の猶予が揺らぐとも思えない。


「彼女自身が言っているバランスの問題だよ。今現在、勇者を手にした聖女と魔王を手にしたチャーリー。でも天秤は聖女側に傾いている。なぜなら聖女は一人で成り立つ役割だけど、悪役は三分割されていて統合されていないからね。その点、時間的に見ても片手落ちを否めない」

「そう、ね?」

「力を手にし、自由を謳歌する聖女側に天秤が傾いているなら、聖女の自由を奪ってその間に追いつこう」



 成程……、すごく正論で正攻法だわ!



「いいわね!? ソレ! で? どうやって捕まえたらいい!?」


 勢い込んで私は聞いた。



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