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◆ 14・初仕事(後) ◆

「ほんとにカリムって、行方不明なの?」


 使用人の誰も主人の居場所を知らないなど、嘘をついているのでない限りは異常事態だ。

 だから私も、彼が故意に姿を隠しているのだと思っていた。

 だが、アレックスの言い方には含みがある。


「そうだね。だから悪役会社の初仕事はカリム殿の捜索かな」

「三人で協力してって事よねぇ……、先輩はともかくヘクターがねぇ」

「彼だって応じた以上は役割を果たすんじゃないかな? それより彼の引き換え条件だよ、獄の魔王たちが大人しく見守ってくれるかどうか」



 その問題もあったか。

 魔王たちにとってはヘクターの依頼、自分達を天使が攻撃しようとしてるって思うかもだし。



「こっちの動きに気づいてればそうよね。今後の動きとしてはカリムを見つけるのが最優先?」

「うん、彼が魔王の城を管理してるも同然だ。案内してもらわないとね」

「まだ悪役会社設立したばっかりなのに?」

「魔王の城が意味を持つのは悪役の力が結集した後だと思うけど、場所は早めに押さえたいね。あぁ、力の結集方法については、ボクも調べておく」


 力の結集。

 死なずにできるものなのかが焦点だ。もしも死なねば継承できないものだとしたら、覚悟を決めるしかない。


「あんたの……目算ではどうなの? 死なずに力の移行ってできるもの?」

「できないね」

「……そう」


 結局、私殺害TOP3とは殺し合う運命らしい。



 大体負け続けてきてるし、いっそ毒でも盛る?



「チャーリー、まだ行動しないでね?」

「も、もちろんよ! むしろ手伝って欲しいくらいだもの!」

「……力の分割について考えていたけど、ともあれ、まずはヘクターで試そう」



 実験好きで実験するのね?! さすがはアレックスっ。

 って……。



「具体的に、何をどうすれば?」

「君の父上がやってた事だよ。ヘクターの血をもらう」


 フローレンス関連の書類を思い出す。


「あの、謎の薄気味悪い人身売買めいたアレって、そういう?」

「君の父上は意味のない事はしないよ」


 嬉しくない評価だが、納得もする。



 あの人でも、親なのね。



 なんとも言えない感覚が胸をしめる。


「じゃ、手っ取り早く怪我してもらう方向ね!」

「……うん、まぁ、案外それが正攻法かも」


 事故に見せ掛けて、ザックリやればいいのだ。

 なにせ相手は仲間だと思って警戒は薄い。そう、いつもよりは薄いはずだ。



 やれる……、たとえヘクターと言えども今回は先手を取るようなもの。

 約定が何よ!

 今までの仕返しのチャンスじゃないの!!



「やるわ……私。隙を見てやるわ!」


 俄然やる気が出てきた私は宣言する。アレックスは戸惑いながらも頷いた。


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