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◆ 13・初仕事(前) ◆

「……ぃ、……ゃーりー、チャーリー……!」


 カエルの声だ。

 目を覚ませば暗闇に白く浮かぶ跪くルーファの姿。周囲を見回せば、与えられた部屋で、すっかり暗くなった廊下には燭台一つ灯っていない。



 あ、れ?

 今、私……、誰かと。



「チャーリー! どうしたの?!」


 珍しく焦った様子の男はルーファと体を交換中のアレックスだ。座り込んでいたらしい私を引き起こし、私の周りをくるりと回る。


「怪我はないみたいだけど……」

「私、どうしたの?」


 問い掛ければ、彼は彼に分かる範囲の事を答えた。


「今後の事を話そうと思って……そうしたら君が部屋の前に倒れていたんだ。驚いたよ」

「倒れて、たの?」

「うん」


 どうにもしっくりこない。

 私も手や体を見下ろし、続いて胸から腹に手を滑らせる。


「ん?」


 まるで古傷に触れたような感覚で、布越しでも皮膚がひりつく。



 痛い?



「チャーリー?」

「さっき誰かいたのよ……覚えてないんだけど」


 アレックスは少し考え込み、顔を上げた。


「もしかして天使関連かな? 一段上にいる住人の名は、記憶できないから」

「そう、かも?」


 おっさん天使が来たなら、記憶は残りそうなものだ。今までがそうだったからと安心は出来ないが、違和感はある。



 ほんとにおっさん天使だったのかな?



「内容すら覚えていないっていうのは気になるけど、チャーリー、ひとまず部屋へ。倒れた事に変わりないんだし」

「そうね?」


 促されるまま部屋に入り、言葉を失う。


「これは……!」


 アレックスが先に部屋に飛び込む。

 バルコニーに抜けるガラス扉が粉々になっていた。飛散した破片は部屋の片隅に集められていて、誰かが掃除をやりかけていた事も見て取れる。


「誰かが侵入した……チャーリー、荷物の確認を!」

「え、あ、……そうよね」


 言われるまま部屋に入り、荷物を確認する。

 特に減っているものはない。


「掃除の途中だね、どうして捨てられてないんだろう」


 心底不思議そうに彼が呟く。


「そうね、何かのメッセージとか?」

「意図が見えない脅しに意味は薄いから、どちらかといえば嫌がらせかもしれないね」

「使用人の?」

「主不在の館に逗留中だし、出ていけくらいの意味合いかもね? ……ともかく部屋は変えてもらおう」


 最もな意見だ。


「エイベルはいつ戻るのよ。あの子がいれば私も安心できるのに」

「そうだね、彼が合流したら、この町から出ようと思ってる」

「まぁ、私もこの旅行の本題は城GETだしね」

「りょ……うん、そうだね。魔王の城は、手にしないといけない。ただ、城はヨルク家の管理下だから、カリムを見つけ出さないとね」



 見つけ出す?



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