◆ 8・迫る死(前) ◆
「あなた、あの第三王子の配下とどんな関係?」
夕食を終え、与えられた部屋へ戻る途中の事だ。
モニークに呼び止められた。問いかけられた内容は反応しにくい微妙な内容。
何で……、いや確かに? 確かに言ったよ、アレックス。個人的に少し関係がある的な事をさ? でもお互い、ちゃんと守るべきラインは守って会話したし?
「婚約者が子供ともなれば同情するけれど……自由恋愛はいただけないわ?」
一瞬の瞠目――続いて出たのは疑問符。
「は?」
端的に返すも、動揺は深い。
流石にそんな質問が来るとは思わなかった。
レンアイ……?
自由恋愛?
「どういう意味??」
「あなたには同情もしているのよ? カエルの次は子供。一歩ズレた相手とばかりの縁」
合点がいく――モニークは第三王子と私の仲を心配しているのだ。
第一王子を廃し第二王子に王位につけたい神殿と、どちらも排斥したい反組織。ヨーク家が第一王子から離れている事は度に船だろう。
だが、立場が対立していようと本人たちの意向が邪魔をしかねない。
特に私よね。町の広場でカエル王子に告白劇、しかもに観衆多数……家はともかく世論の後押しとか邪魔になるか……。
自由恋愛なんてするタイプじゃないが、結婚するなら断然カエルなアレックスだ。カエルじゃないアレックスのとっつきにくさと来たら、他にない。
「ないわ」
すげなく答えた。
あの姿のアレックスと、どうこうなるなんてあり得ない。
「私、こう見えても良家の子女よ? お父様の意向には逆らわないわ。生活が掛かってるものっ」
「……それって、良家の子女の考え方かしら……」
「時代がそうなのよ。とにかく、私だってあなたたちの同志の一員よ。可笑しな真似をして、折角の入団取り消しになりたくないわ」
「それなら、早く任務を全うするのね。それとも、『その為』に悪役会社とやらを始めたのかしら?」
モニークは意地の悪い笑みを浮かべている。
もちろん、反組織からの任務『オズワルド・スライの殺害』を忘れたわけじゃなかった。それでも彼女の言葉が引っかかる。
先輩の殺害命令は反組織にとって必要なのだと思ってきたけど、もしかして、……あの予言ババァの予知だかなんだかで、悪役の力の結集うんたら的な事が原因だったんじゃ?
だとするなら、反組織は私よりずっと知っているのかもしれない。この魔王勇者聖女悪役システムの事を……。
モニークは私が思ってるよりずっと事態を知っている可能性がある。
何も知らない部外者との考えは改めるべきだ。
「いいの? モニーク」
死にたくないってだけじゃないっ。今更やりなおしなリスタートとか、絶対阻止よ。
刺激しすぎない程度に……賭けに、出る!
「先輩を殺す事がどういう事に繋がるか、大体分かったんじゃないの?」
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