◆ 6.魔王の首 ◆
「魔王の首ですって??」
エイベルはこの場にいない。アレックスが彼に別の役目を与えたからだ。
今となっては、この場に彼がいなくて良かったと思う。
「それは、どの魔王か……聞いても?」
魔王と言ってもウチの弟でない可能性はある。なにせ魔王は魔界に数人まだいるのだから――。
「炎の魔王がいいかな!」
よりによって、炎!!!!
私の契約魔王じゃないのっ。
「り、理由を聞いても?」
「え? お姉さん、どうして?」
どうしてって……そりゃぁ……。
炎の魔王とはアーラを引き渡すって契約してるわけで……、コイツは天使側のスパイで……しかも怪しく宙見つめてたし? もしかしてアーラの事で、天使側から炎の魔王排除話が出たって可能性も。
いや、流石に考えすぎ?
「相手は魔王よ、首を取りたいって手伝うにしたって生半可な覚悟じゃできないわ。せめて納得のいく理由とか、なんでソコを選んだのかとか、なんで魔王なのかとか……」
言えば言う程、言い訳じみた口調になる。
彼は「成程ね」と呟き、懐からピンク色の石を取り出した。
「コレに炎の力を入れたいんだよね! 多分、魔王の心臓を入れたら真っ赤に輝くはずなんだっ。そうしたら、死んでるのに死んでない特別な心臓が見れるんだよ!? 凄いなぁって思って、それは是非、見たい!」
「何言ってんのか、よくわからないんだけど? えーっと、心臓を入れるの? 魔王の?」
「あ、首は首で使いたいんだ! 煮込む予定で、あ、それはまた別の薬用なんだけど」
うん、分からない。
チラリとアレックスを見る。
彼は瞬き一つで請け負ってくれた。
「カービー様はご自分のライフワークに対する素材として、魔王が欲しいというわけですね?」
「そうそう!」
「素材としては炎の魔王が最適なのですか?」
「だね! あ、ライフワークの詳しい内容聞きたい? 話すよ!」
「いえ、後ほど個人的に伺いたいと思います。今は条件を詰めましょう。対象は炎の魔王で、生け捕りと討伐、どちらですか?」
「生け捕りかな」
アレックス……クールね。
「次に方法論ですが、シャーロット嬢とスライ様の協力を得て三人で取り組む作業なのか、シャーロット嬢とスライ様が現物支給する形なのか、どちらでしょう?」
「げ、現物……いやいや、アレックス? それはちょっと……」
「時間がもったいないし、現物かな!」
「待って待って!!!! 聖女よりよっぽど高い山じゃないの?! あんた自分でヤんなさいよ!」
先輩も大きく頷く。
だが、彼は首を傾げた。
「魔王なら過去に一匹殺した事あるよ。もう一回チャレンジして成功しちゃってるし、別にって感じかな」
殺せるなら……あんたが、ヤりなさいよ……!!!!
……アレックス、信じていいのよね?! ちゃんと断ってくれるのよね?!
万感の思いを込めて、元婚約者を見つめる。
「では引き換え条件は判明しましたし、決定していいですか?」
無情にも、彼は私と先輩に問いかけた。
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