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◆ 23・守護神の作成材料(後) ◆

「はい? カリム様、なんて仰いました?」


 本来、聞き損じたなどという事は恥でしかない。

 だが、この場合は仕方ないだろう。信じたくもない事をこの男は口にしたのだから――。


「あ、もう少し説明した方がいいですよね! 思わず気持ちが先走ってしまいまして……」



 いや、そこはどうでもいいし。血がいるとか言う気持ち悪い話の理由だけで充分だし。



 しかし、求めてもない説明を始めるカリム。


「シャーロットさんはヨーク家の方です。伏せられてはいますが、ヨーク家の方って悪役を多数輩出されている家柄じゃないですか」



 なにその、全く誇れない家柄……。



「ですからシャーロットさんが、今代の悪役令嬢である事も知る人ぞ知る形で、私も知っていました」

「はぁ……」


 曖昧に頷く。



 でもおっさん天使が言ってたような事は知らないのよね、きっと。アーラが私に入れられている理由とか。ってか、この悪役家云々をアレックスは知ってたんだろうか?



 思わず彼を見るも、その顔に動揺はない。

 それどころか、何かに納得がいったかのごとく頷く。


「カリム様の仰る通り、シャーロット嬢の実家は三大悪役家の一つです」



 え、三つもあるの?!



「血に意味があると、我々は考えて良いのでしょうか? つまり聖女は勇者に力を与え、魔王は悪役から力を徴収します。その力の源となるものが、彼女の血脈に関係すると」

「はい……我々も魔王不在時はその血を利用させてもらっていたんです」

「なるほど、モンスターを言いなりにする材料は悪役の血だったんですね」



 いや、待って、全然わからないんだけど?! その三大悪役家とか言うのも今よ、今、知ったばっかり! おまけに力を魔王に徴収されるって何よ、確かに殺される系な運命ってのは知ってるけど……。



「あ、シャーロット様、今の話を要約しますね」


 口を挟まれたくないのか、アレックスは私に言った。


「魔王や聖女は定期の周期と考えてください。その間も人間は営みがありますし、三大悪役家とて同じです。勇者は聖女が選定する為、どこの血筋がという目利きができません。逆に悪役は今の話からも分かる通り、血筋なのかいくつかの家から排出してきました」



 なるほど、そのうちの一つがヨーク家なのね。



「魔王が査収していましたが、悪役の血には力があるようです。そしてここヨルク家は魔王不在時に、悪役の血を利用しモンスターに差し与えて言いなりの守護神に変換していたようですよ」


 立場上、彼はことさら丁寧に説明していく。どこか壁を感じる口調に違和感はあるが、仕方ない。


「ん、待って、今って……」



 魔王いる時代ですけど? 悪役の私の血を使おうとしたの可笑しいような?



「そう、そうなんですよ! ですから、シャーロット嬢、お願いします! 半分、いえ……ちょっとでいいんで、少しだけ生贄になって貰えませんか!? この町の人々を助けるためなんです!」


 カリムは急に割って入ってきた。あまつさえ、私の手も握りしめる。

 情に訴えかける気だ。



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