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◆ 18・ヨルク家とヨーク家(後) ◆

「確かにそうね……」


 生贄にしようとしていたヨーク家の娘は生き延び、守護神カメは死亡。

 誰が見たとしても、私達を無事に帰すメリットなんてない。



 また、新たな死亡ルートじゃないの、これ! 冗談じゃないわ……。



 生き延びた情報はどこかから漏れるだろうし、漏れた場合は追い打ちをかけられるに決まっている。今、取れる手段は多くないが、それでもヨルク家に顔は出さざるを得ないだろう。


「向こうが行動を起こすまでは、すっとぼける、とかが定石なんじゃない?」

「キャメロン殿下が仰っていたのですが」


 アレックスが口を開く。

 一応、第三王子キャメロンの配下である設定は守るつもりらしい。


「ヨルク家というのは、特殊みたいでね。この辺りでは神獣を安置したとして、神官の役割も担っているんだとか。実際はモンスターのカメだけど、彼らは特殊な力あるモンスターを見出し、あちこちにこうしたオアシスを作って人間の生存権を獲得しているんだとか」

「一見すれば、良い事なんだがな。事はそう単純でもない。今のように、生贄を求められるわけだからな」

「そうだね。スライ、さんの言う通りだよ。肉を食らうだけなら死体を差し出すという方法も取れたかもしれないけど、生きた人間を求められているんだ」



 成程? こういうカメみたいなのが他にもたくさん……。



「ヨルク家は元締めって事?」

「近いね」

「でもヨルク家は何でそんな方法を知ってたの? 元はうちの分家なんでしょ?」

「だね」



 モンスターを従える能力があるなら、イノシシ騒動の時だって何とかできたんじゃ?



「チャーリーも気付いたと思うけど、モンスターには二種類いるんだ」



 ……いえ、気づいてませんでした……、なんて?



「その動物由来の力しか使えない個体と、魔法にも似た能力を保持する個体だね。これらは人間が故意に作り出した存在でも、万物の影響から産まれ出でた存在でも、発生する可能性があるんだ」

「はぁ」


 気のない返事を返す。

 特殊能力を保持した個体だけを連れてきて町を作っているのは分かったし、それが必要な環境だという事も理解している。



 それに、同郷の知り合いになる可能性がある隣人よりも赤の他人の旅行者を狙うのもね。でもさ? 仮にも親戚だってのに、何で私を選んだのよ。



「教団がモンスターを生成しているのは、恐らくこの特殊な個体を人為的に生み出そうとしているからだと思うよ」

「餌を与えたら、モンスターって言う事を聞くの?」

「生贄はあくまで食事。暴走させない為のものだよ。価値ある供物を添えて、言いなりにするらしいね」

「価値ある供物って?」


 アレックスは首を振る。

 彼にも分からない事があったらしい。


「でも生贄も無作為に選ばれているわけじゃないとは聞いたね。一応、食事としては誰でもいいらしいけど」

「誰でもいい、で選ばれて食べられちゃ堪らないわね。まさか、今後の為にもヨルク家との会食なり何なりの場で、そこを探っていこうって言うんじゃないでしょうね?」


 嫌な予感をそのまま言葉にしてみれば、彼は悪びれもせず頷いた。


「うん、突き留めておきたいね」




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