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◆ 13・オアシスの守護神vs栄養失調な魔王(前) ◆

 地上に走り出て、思考停止――明るい空。

 深夜の空は明けるように白んでいる。遠くは星空が広がっているのだから、可笑しな事が起きようとしているのだと分かった。

 後ろから影が被さり、見上げる。


「……なん、だ、山が……、おい、山が生まれるぞ?!」


 先輩の声音が全てを表していた。

 背後に大きな半円。

 山にしては小さいし、巨岩のようなソレは六角の文様が浮かんでいる。時折ゆさりゆさりと揺れる。


「……まさか、よね?」


 誰に問いかけたわけでもない。

 でも誰かに否定して欲しかった。


「オネーサマ?」



 大きすぎる……。



 その巨大なモノが何を意味するか、本能が理解してしまっている。

 カメだ。

 恐らくはカメなのだ。

 もちろん、イノシシもイカも大きかった。だが、イノシシは距離感が遠かったし、イカは身体の大半が海の中でその姿の全容を見たわけではない。



 この距離で、このサイズ! 普通に死ぬでしょ?!

 いやいや、エイベルはイカもぶっ飛ばしたし……? そ、そうだわ、イカ殺してたよね? イカ殺してて寝込んだって事はやっぱカメじゃダメって事? いや、今は考えるなっ。



 岩山の裾野から、ぬぅっと覗く顔。

 もう見紛いようもないカメその物だ。

 赤い瞳がこちらを捉える。


「エイベル……!」


 指示を含ませた声に、彼が飛ぶ。

 地を蹴り、宙に舞った体――だが姿なき何かに突き飛ばされ、地面に叩き戻された。凄まじい衝突音と共に地面を削り、民家の壁に激突する。


「え?」

「は?」


 私とモニークの声がハモった。


「ちょ、ちょっと……エイベル?!」


 ルーファが溜息をつく。


「まぁ、今の状態じゃ納得の結果だな」

「どういう意味よ! 説明、すぐに説明して!」


 ルーファの胸倉を掴み揺する。


「だかーらー……単純にエネルギー不足ってヤツだよ。アイツ、ロクに食ってねぇんだろ? つーか、さっきの見る限り、喰い方もなってねぇけど」

「だからっ、どういう意味よ!?」


 食事なら充分すぎるほど食べさせてきた。


「悪魔の食事は知ってんだろ? 形はどうあれ、人間から接種するのが一番のてっとり早い。アイツは栄養失調が続いてる状態だな。人間一匹の死程度じゃなぁ」


 ルーファの食事は生気や欲を吸い取る形だった。


「さっきも、吸い取りが少なかったしな」

「吸い取り?」

「しょうがねぇな……」


 呆れたような彼の呟き、同時に頬に衝撃。



 なぐ、られた?!



「は……、い……?」


 混乱からカエルの顔を見つめる。


「おい、魔王! さっさと動かねぇと、お前の姉貴が死ぬぞ?」



 な、なるほど!? 使命感に訴えかけるパターンねっ。



 即座にルーファの意図を理解し振り返る。雰囲気次第では泣き叫んでやってもいいと思うも、エイベルはクールな態度で立ち上がった。


「痛みが足りねぇのか、栄養になってねぇな。痛み、血、肉、恐怖、どれが食事だろうな」

「肉、困る……!」


 慌てて抗議する。


「つっても、アイツのエネルギーが足りねぇと話にならねぇだろ」

「いやいやいやっ!」



 そのために痛めつけられるなんて冗談じゃないっ!



 必死で立ち上がり、弟の後ろに逃げ隠れる。さぞかし無様な姿だったらしく、ルーファが愉快そうに笑った。



 ルーファ、覚えてなさいよっ。



「血かな?」


 私の怒りをスルーして、栄養失調魔王が答えた。




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