◆ 11・魔王の救出(後) ◆
早すぎるっ!
状況は最悪。
まだエイベルが復活していない状態で、怪我人のモニークがいるのだ。逃げ道は一本である以上、敵とぶつかるのは間違いない。
「先輩! モニークをお願いっ」
私が今する事は、エイベルの……魔王の管理っ。何をすべきかは、まだ分からないけど……、あの状態から普通に戦える状態まで戻す事よ!
意を決してモニークから手を離した時、悲鳴が轟いた。
「……な、に、……今の……」
続く悲鳴、悲鳴悲鳴。
駆けだそうとしていた足は止まり足音さえ立てずに、そっと扉に近寄る。押し開けばキィと音がする他、無音。
ほの暗い廊下に伸びる影と、小さな背中。
エイベルだ。
争った際に壊れたのか、いくつかのランタンが床に落ちていた。
人も――入口で見た護衛兵の恰好で倒れている。
見覚えのある顔だった。
私が担当した方の……、しっかり気絶させられなかったから……っ。
床にはしっかり見えなくとも、濃い色の液体が広がっている。それが何を表すかは考えるまでもない。
「チャーリー、分かるか?」
肩に手が乗る。
カエルの姿のルーファが朗らかに耳元で続ける。
「アレが、コントロールだ」
コントロール? こんなものが??
「聖女に産まれたての赤子を、魔王には死を。本人が作る必要はねぇ、周囲が作れば同じ事だ。ソレを見せることが重要なんだよ」
「私に……人を殺せって?」
殺されまくってる私に?? そりゃ殺されかければ殺すけどさ? 殺されてもないのに、ただ弟の精神安定の為に殺すなんて、……それじゃまるで……。
「まるで生贄じゃない」
零す私に、ルーファは笑った。
「当たり前だろ? お前は魔王側なんだから」
悪役だと言われ、私自身だって清らかだなんて思ってないし、どちらかと言えばロクでもない人間だって自分でも分かってる。
だからって意味もなく、赤の他人を殺すような心境にはなれないわ!
エイベルは床の血を見つめたまま、棒立ちだ。
「エ、イベル……?」
彼が振り返る。
「またヤッた」
ガラス玉のような瞳に、言葉が紡げない。
おそらく『また』というのは人殺しの事で、彼は前に人を殺した事があると言っていた。ルーファの話と合わせて考えてみれば、前回も同じ状態からの殺害行為だったんだろう。
薬、みたいなものだし、もしかしたら魔王にとっての本当の意味での……食事なのかも。
正しい間違っているを考えても仕方ない。あのまま第二段階に突入すれば、彼は瘴気とやらを噴き出して、周囲に更なる死者を作ったのだから――そう、他の誰でもない私自身に、言い聞かせる。
そして、聞くべき事を口にした。
「エイベル、体調は?」
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