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◆ 28・オアシスの町(前) ◆

 こういう旅って、普通は仲間のパーティーメンバーが仲良くなっていくのがセオリーじゃない?

 ぜんっぜん!!!! 距離縮まらないんですけど?



 旅が過酷すぎるのかもしれない。

 口を開けば砂を食べる事になるのだから、自然と言葉少なにもなる。寒暖差の激しい昼夜に合わせ、夜に歩き、昼に眠るようにもなっている。

 たびたび登場するモンスターの相手はエイベルが請け負っているものの、登場すれば身構えるのが人間だ。いや、『だった』だ。今やモンスター登場にも平常状態となっている。

 全員、疲れすぎている。




 砂漠ってオアシスあるんじゃなかったの? ずっと砂漠なんですけど?



 充分には程遠い水や食料に――ほぼエイベルの所為だが――生存環境最悪の行程だ。

 あと小一時間でヨーク家の飛び地とやらに入るらしいが、まだカメ問題は起きていない。



◆◇◆



 何事もなく、朝一で到達したヨーク領。

 先ほどの砂漠地帯が嘘のように、ココには緑が茂っている。緑が壁のように町を包み込み、入口には関税用らしき煉瓦門。

 お決まりの旅券確認と目的確認もサッと終了でメインストリートのお目見えだ。土の地面は砂漠と違い、歩きやすく固められている。

 左右に展開する商店はテントが大きく張り出し、道端にまで商品が並んでいた。

 王都とまではいかずとも、随分と人通りも多い。


「これ、オアシスの町って事?」

「そうね。ここはオアシス町アスィーハ、ヨーク家で金にあかせて購入した別荘地ね。ヨーク家にはこうした土地がいくつもあると聞いてます」

「く、詳しいわね……モニーク」


 詳しい理由など私たちについて色々と調べ回った結果だろうが、それでも娘である私よりヨーク家を知っている事は驚きだ。


「でも、……さっきのサソリが来たりしないの?」

「ありえません」

「ないな。ヨーク領にはカメがいる」



 カメ!? ココでカメ?!



「モンスターには縄張りがある。サソリの領地、カメの領地、クモの領地といった具合だ。通ってきた砂漠はサソリの領域で、このヨーク領はカメの領域だ」

「先輩! じゃ、カメがいるの!? モンスターの?!」

「モンスターじゃない『守護神』だ、この町では」

「しゅごしん……」


 理解が追い付かず呆然とする。


「チャーリー、他国に所領を持つ事は本来とても難しい事なんだ。その土地の扱いをどちらの国が有する事とするのか、その土地の所領を持つからにはそちらでの貴族位も持つ事とするのか。いくつも立ちはだかる問題があるんだ」

「はぁ」

「だけどヨーク家の功績は高かった。それら全てを受け入れる程にね」

「ご先祖様? お爺様? ヨーク家が、何をしたのよ?」

「少し前、ここも砂漠だったんだ。ヨーク家が『ここ』にカメを連れて来て、緑を作り、こんなにも発展させた。人間の地を増やしたんだ。ヨーク家は功績を認められ、叙勲とこの地での貴族位も得たんだ」


 一拍後、アレックスは目を逸らした。


「……と、まぁ、その、キャメロン殿下の調査によればそういう事らしいよ。少なくともボクは殿下から、そのように聞いて来たからね」



 あぁ、その設定あったね……。



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