◆ 21・父の言葉(後) ◆
「お父様は、知っていたかも。私がリスタートしてた事……」
呟く私にアレックスも頷く。
「気付いていても可笑しくはないよ。彼は今だって、君が『気持ち悪い』っていう程の情報を持っているんだし。問題はその記憶を引き継いでいるのかどうか、だよ」
「それは……そうね?」
「今から問題になるのはキャメロンのように……リスタート人生に気づいてしまった人間だと思う」
確かに、キャメロン殿下からの恨まれっぷりは相当だったわ。
「記憶を引き継いでいたり、リスタートに気づいている人間。ボクらが把握しているのはライラとキャメロンだけで、実際はもっといるかもしれない」
「キャメロンが気付いてるって知ってたの?」
驚く私に彼は肩を竦めた。
「密談の折に聞いたんだ。ルーファは悪魔だからやり直しを知覚し続けていたらしいね? ミランダも悪魔となったからには今後は記憶を持ったまま……という事になるね?」
「そう、ね」
「それで、チャーリー。ヨーク侯が間に入った場合でもチャーリーは教団に殺されたの?」
明言はできない。
そんな事実関係を考えて生きてない時期の方が多いのだ。それでも――父に逃がしてもらった事は何度かある。ある時は傭兵組合や人材派遣組合の後ろ盾になって貰い、信用を買ってもらい、仕事を斡旋してもらった。
そうして仕事に出た先で、時に崖から落ち、時に溺れ、時にモンスターに殺されてきた。
「啓教会に断罪されて、ってパターンとは違うわね」
ある意味、モンスターに殺されたパターンは啓教会に殺されたようなものだが――。
「チャーリーがたくさん殺されてきたって事は分かってるし、その苦しみを理解する事は難しいからこそ質問できるんだけど……」
言いよどむアレックス。
「いいから言いなさいよ」
「ヨーク侯……いや、ヨーク家の系譜に、天使が入り込んでたりしない?」
天使? 悪魔じゃなくて??
お父様が天使? お爺様やお婆様たちの誰かが? うーん、全員どっちかって言うと……悪魔かと聞かれれば性格的に考えても悪魔なら納得なんだけど……そういう意味じゃないのよね? ルーファと同じ系統の、いや、おっさん天使のような、あーいった生物って意味よね?
「どうしてそう思ったの、アレックス?」
もしも父が天使だったなら、合点はいく。色々な事情や感情を取り去って考えてみれば、アーラのように心の声を読めば隠し事など丸裸も同然。なんでも知りえて当然だ。私といるアーラよりも人界に詳しい天使がいたなら充分に今までの違和感にも納得がいく。
ただ、それが家族のだれかってのは……。
「チャーリーは天使に会う前って、天使の存在をどう思ってた?」
「どういう意味よ……さっきから質問ばっかりね」
「ごめん」
溜息をついて、思い出す。
「そうね、存在なんて信じてなかったかも? 信仰や礼拝も、そうするよう言われてるからってのが大きいし?」
「うん」
「まぁ、伝説の上って感じよね」
アレックスは「そうだよね」と呟く。続けて彼は言う。
「雑談の一つだと思って忘れてたんだけど。はじめて君に会った時、ヨーク侯から言われた言葉があるんだ」
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