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◆ 3・戦いの序曲(後) ◆

 父が何故、ここまで知っているのか。また、知りえた方法は何か。いずれは突き止めなければならない。

 だが今の問題は――間接的に敵対関係にある二人だ。憮然とした面持ちの先輩と、外見上は笑顔を見せているモニーク。どちらも外套を羽織り、背と手には大きな荷物を持っている。



 最悪の旅になるわ、これ。

 ってか、ミランダはコレ……知ってるの?



 昨夜遅くに帰宅した私は、まだミランダと合流していない。三日前――封じられた書庫への侵入時が最後だった。学園も欠席理由や父への報告がどうなっていたのかも含め、一度会って話を聞く必要がある。


「お父様、やはり身支度を整えてまいります。エイベル、あんたも旅用に……用意してきて」


 部屋に戻ろうとする私に、父は曖昧に頷いた。



◆◇◆



「ミランダ!!」


 部屋に飛び込めば、掃除をしていた彼女が手を止める。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


 完璧なメイドらしい出迎えも、今は心が動かない。


「どうなってるの?! エイベル、旅に出る事になってるんだけど? あ、ついでに私もね!」

「お嬢様も? 任務はどうなさるおつもりですか?」

「いやいや、スライ商会潰せ任務よりも大きい問題が起きてるのよ。なんと! 旅の仲間が、モニークとスライ先輩よ!」


 ミランダは言葉を失ったように黙り込み――続いて、スカートをつまんでお辞儀をする。


「頑張ってくださいませ」



 放り投げた!?



「いやいや、あんたね……。曲がりなりにも私と契約してんでしょ、私が旅に行くって結構な大事だと思うんだけど?」

「それで、必要な情報は入手できたんですか?」

「一応? それっぽいのは……ね」


 情報としては本を持ち帰っているし、入手には成功している。


「で? あんたの方は私の不在をどう言い訳してくれたの?」

「学園の方へは、体調不良の欠席として提出しております。旦那様たちにもそのように取り計らいましたが、勝手に気付かれてしまいましたね。ですが、受け入れていらっしゃるので問題ないかと」

「そう……」



 ほんと、どうやって情報仕入れてるのよ。何を狙って行動してるのか分からな過ぎて、こっちが混乱するわ。魔王の城を手に入れて来いってのだって、灰色計画と関係があるから言ってるのか。



 判断に迷う事ばかりだ。



 ねぇ。一応聞くけど、魔王に城って必要?

〈んー……お城、居場所を作るの意味? 魔王の根、広げるところ?〉

 何言ってんのか分からないんだけど?

〈んー……の聖女にとって勇者が必要なように? 魔王にもお城が大事だよ〉

 思ってたより重要じゃないの?! 初めて聞いたわ!!!!



 すでにミランダは私の荷物を詰め始めている。

 魔王に城が重要だと言うならば、父の言う通り悪役令嬢としての務めを果たす意味でも行動しなければならない。


「ミランダ、あんた行かない気ね?」

「護衛と言う意味ではエイベル様がいますし、問題ないでしょう。私はこちらに留まり情報収集に当たります」

「ミランダ……モニークたちのゴタゴタが嫌で拒否してるでしょ? ……まぁいいわ。旅に行かないなら、お父様がなんでこんなに正確に情報仕入れてるのか調べてよ」


 彼女は「了解しました」と短く答えた。


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