◆ 30・悪役令嬢が死ぬ理由(後) ◆
「悪役だったら、どうだって言うのよ?」
平然を装い、問いかける。そこまで気付かれている以上、隠す方が可笑しい。
だが『なぜ?』は付きまとう。
悪役令嬢の力で聖女は輝くのだから、私は生きていなければならないはずだ。少なくとも、聖女が覚醒するまでは――。
「人生、何度もやり直すのってどんな気分?」
言葉を失った。
「何度も、何年も……可笑しいと思ったよ。なにやっても見た事のある景色、言葉、場面。何度も何度も……! 最初は、ちょっとした違和感だった」
嘘……でしょっ?
ライラみたいに気付いてるヤツがいたって事?
「どんどんソレが、リアルに変わっていって、気づいて……そうしたらさ? 調べるよ、そりゃあ。いつ終わるとも知れない時間が、巻き戻るその時まで……調べて調べて、また調べて過ごしたよ。どこまでが夢で、どこからが現実で、どこを今歩いてるのかも!!!! 分からなくなるくらい、朦朧とした世界を……さ」
彼は私の側までやってきて覗き込む。
「あれぇ? 無口だね? ああ、なんで襲撃を受けたか悩んでるの? そんなのタダの、仕返しと復讐だよ! 結局殺せなかったけど、その何とも言えない顔が見れただけでも気分が良いなぁ!」
腹は立たない。
気付いていたなら納得もする。つまり今、相対している少年は少年ではないのだ。何歳かは分からないが、それなりに結構な年輪を重ねている大人だ。
「本好きだの聡明だの天才児だのって、噂が独り歩きしてる。でもどれもが必死だった結果なんだ……実際は何十年も書庫通いしてただけだし? 同じだけの時間があれば皆よりバカって言われてるかも?」
「殿下の言葉が真実なら……そうでしょうね」
上辺だけ、動揺を押し隠す。
「でも……調べれば調べるほど驚きばっかりだったなぁ。特に、悪役に割り振られた人間に『やり直す能力』があるって」
ん?
「代々受け継いでるって知った時はね」
勘違いしてる!!
それは箱庭刑の産物で、能力があるわけじゃ……。
だが話した所で無駄だ。彼の目を目を見れば分かる。底なし沼のように淀み、昏い絶望が宿った目。
悪役が全員箱庭刑だったとしても驚かないし、そういう意味で言えば能力持ちと解釈されても変わらないのかもしれない。
「でもさ、ココで矛盾が生じるわけだ! やり直す能力を持ってる悪役が、なぜかやり直せなくなる瞬間が来る! 悪役にトドメを刺すのは魔王。魔王に殺されるまで、世界はループする……」
いや、待って待って? ルーファは前に……箱庭刑を生きてる人間にかけるなんて聞いた事もないって……、でも、ルーファの言葉はどこまでが真実? 信じていい?
「ループを続けてちゃ、世界は先に進めないんだから悪役は確実に死ななきゃいけないし、その確実な死はさ、魔王にしか与えてもらえないってわけ? 間接的に魔王が世界を促進してるなんて、皮肉だよねぇ?!」
私はハッとしてエイベルを振り返る。
まだ子供な彼が、今の話をどう受け止めたのか――フォローすべき言葉を探す。
「オネーサマにトドメを刺すなら」
彼は逡巡し、きっぱりとした口調で告げた。
「オネーサマが、決めた日にする」
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第二部完結です!
色々な謎の解明に取り組む部でしたが、新たな謎もでてきました。
明日からの第三部は、対決がメインとなりますw
第三部も、よろしくお願いします!!
更新時間は今まで通り、毎日17時前後を予定しています。
(仕事の関係で、もしかしたら22時頃になる日もあるかもしれません><。)
これからも『悪鬱』を、よろしくお願いします!
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