表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/375

◆ 27・隠された本(中) ◆

 眠そうな弟と共に、ミランダの用意した黒装束を身に纏う。動きやすい男物の上と下にフード付きの外套だ。


「エイベル様、手順は大丈夫ですね?」


 着替え終わったエイベルにミランダが問いかける。どうやら起こすと同時に、何かしらの説明をしていたらしい。


「うるさくなったら、オネーサマと中に入って、一番下までいく」

「ですね。途中、人に会わないようにしてくださいね。会った場合はどうしますか?」

「なぐる。……死なないくらいで?」



 あんたにできるの……? 前に、殴りもせずに瀕死にしたよね????



 ミランダは拍手する。


「お嬢様、エイベル様に従って行動なさってくださいね」



 なんだこれ……、私には説明なし?



「では、参りましょうか」



◆◇◆



 星空の下、ミランダは私たちを王城近くの林で放置し去っていった。おそらく騒動要員と合流する為だ。

 待ち時間に眠気がくる事も心配したが、実際は虫が飛び交い、草が揺れる音で寝る所ではなかった。エイベルが私の外套を欲しがる。

 手渡した時、ちょうど兵士たちが馬に乗って走り去っていくのが見えた。

 城の方が明るく照り、ざわめきが風に乗って届く。



 今か!?



 思った瞬間、視界を失う。


「え?」


 布だ。視界を塞いでいるのは私の外套だと気づくも、同時に浮遊感。


「ちょ……っ!?」

「オネーサマ、だまって。うごく」


 頭が激しく揺れる。

 彼が私を抱えて動いているのだ。閉ざされた視界ではどこをどう動いているのかは分からないが、激しく体は揺れるし、内臓もシェイクされている気分だ。



 も、……っ、もどしそう……っ!



 必死で吐き気をこらえる。ココで欲求のままに吐き出せば、自分の吐瀉物にまみれる未来しかない。



 エイベル……っ、許さないからっっ!!!!



 それからどれくらい時間が経ったのか、エイベルの「ついた」という短い言葉が朦朧とした頭にも届く。

 硬い床に降ろされ、私は外套は遮二無二脱ぎ捨てる。もう欲求を押しとどめる必要はなかった。



◆◇◆



 ややあって落ち着いた頃、エイベルが口を開く。


「ついてる」

「……わかっ、ってる……」


 口を漱ぎたいと言葉にするより早く、水の入ったガラスボトルを差し出す弟。


「オネーサマ、あの人からはゆっくりするように言われた。何日でもいいから、ちゃんと見つけさせろって」


 ミランダは色々と見越して、彼と彼のバッグに計画を仕込んでいたようだ。


「ミランダは何を見つけろって?」

「聞いてない」



 ……ミランダめ……。見つけろって言われても、干し草の針よ。



 周囲には天井が見えない程の巨大な本棚たち。

 前回はカエルがいたが、今回は何の力にもなれそうにないエイベルとだ。正直、終わってる。



 この中から、悪役に選ばれた人間はどうして選ばれ……死ぬのかを、見つけるっ。……ついでに、オリガの真実に迫れそうな、何かも。



 王家の指輪がない私にとって、水晶は只の透明な石だ。

 私は手近な本へと手を伸ばした。


読んでくださってありがとうございます。

ブクマ・★評価も嬉しいです♪


「面白かった!」

「今後の展開は?」

と思われた方は下の☆☆☆☆☆から(★数はお好みで!w)作品への応援お願いします。

ブックマークやイイネも励みになります!


よろしくお願いします(* . .)⁾⁾

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ