◆ 25・対応策 ◆
その日の夜、私は自分で髪を梳かしながら何度も母の言葉を思い起こしていた。
『エイベルを頼みの綱としろ』
『啓教会に気をつけろ』
グルグル回っている。
言い分は納得するも、エイベルの方は納得がいかない。母の言う通り、悪役は魔王によって殺されてきたのだから、魔王を頼みの綱にする事ほどナンセンスなものはない。
ってか、気を付ける事だらけで身が持たないわ。しかもアーラは……なぜか無反応続いてるし。
「悪役令嬢とか歴史伝承について調べるなら、城の地下書庫が一番だけど……カエルとの婚約解消しちゃった今、入れるかな?」
「忍びこんだらいいじゃないですか?」
ミランダが事もなげに発言する。
自分で身支度はすると言って以来、この時間も彼女にとっては休憩時間だ。一応、私の護衛を兼ねて同じ部屋にはいるが、彼女はベッドに寝転がって本を読んでいる。私の本だし、私のベッドだ。
「どうやってよ? あんたが手引きでもしてくれるの?」
「偶には、お嬢様ご自身で頑張ったらどうですか? 言ってたじゃないですか、やり直し人生の中では盗賊団に入った事があるって」
「……緩いトコね。めちゃくちゃ緩いトコだったのよ……」
「今も、あるんじゃないですか?」
盗賊団使って、城に侵入しろって?
「そりゃあるかもだけど……」
「どこでどんな風に入団するか分かっているなら、話は早いでしょう?」
「あのね、ミランダ。私が入ってた盗賊なんて、そんな大層なものじゃないのよ。しかもあの時の入団儀式、私のは……その、カエルとウチの別荘に侵入させる手引きだったし」
ミランダは寝そべったままこちらを見る。
「うわ……っ、流石のクズっぷりですね。持つ者は何でも持ち物で解決。いかにも金持ちの道楽っぽいです。流石です、お嬢様。徹底してますね」
皮肉な誉め言葉としてすら受け取れられない言葉だ。
「いいですよ。どうせあなたを護衛して回らないといけませんし? 啓教会の方から数人借りてきましょう」
「……ミランダ、あんたって啓教会と反組織と、どう折り合いをつけてるの? メインは反組織側でしょ?」
「私にも色々あるんです」
彼女は起き上がり、私の後ろに回ると梳かし終わった髪を一つにまとめてリボンをつけた。
「おやすみなさい、お嬢様。段取りをつけてきますので、明日の護衛はエイベル様にお任せします」
退出するミランダを見送り、ベッドを見つめる。
先ほどまで彼女が読んでいた本が乗っている。かつてお気に入りだった『アデレイド戦記』九巻だ。
オリガ・アデレイド……明日、全部捨てよう。
この本には、もう何の意味もない。彼女は色々な真実を捻じ曲げていた。復讐に取りつかれた亡者だ。
そういえば、オリガが前に……何か、本の事で言ってたような? なんだっけ……? ヤバい、思い出せない……。
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