◆ 24・幸せの掴み方(後) ◆
「お母様、お呼びとの事でしたが……なんでしょう?」
すでに対面して三十分は経っている。
母はそれから十分は無言のまま、時を過ごし――やがて。
「幸せって何だと思いますか?」
と聞いて来た。
母よ……そんな哲学話をしてる場合じゃないんだわ、私。お母様とお父様の間で何があったか今更、興味もないし? 私、常に生きるか死ぬかの戦い中にいるんだよね……。
それでも母は母だ。
答えねばならない。
「おびやかされずに生きていける事、な……ような? 気が、します」
「そうですか」
……会話終了?!?!
母はややあって、私の前に立つ。
「資金と場所を用意しました。名前も」
「……え?」
「シャーロット・グレイス・ヨークの代役を買う事もできるでしょう。……それで、幸せに生きられそうですか?」
母の視線が私の瞳を捉えた。
「幸せであって欲しいと願ってきました。与えられる物は全て与え、幸せだと感じられる人生を……と。ですが、立場が阻害しているならば……、お前を手放す事も厭いません」
お母様……。
母が私を抱きしめる。
この温かみは予想外だった。
……嬉しいかって? ありがたいかって?
いや、迷惑だわ!!!!
きっと、母親としては最高の対応なのだろう。だが、私は箱庭刑の真っ最中なのだ。
逃げて終われるなら、今までの世界線のどれかで完遂できていた。できないから――立ち向かうしかないからこその『今』だ。
「お母様……お心遣い、ありがとうございます」
「……でも、断るのね……お前も」
意味深な表情で、母が遠ざかる。
「分かりました。ただ、この計画にはお父様も協力してくださった事をお伝えしておきます」
「お父様が?」
灰色計画推進中のお父様が何故?
悪役令嬢の役割をこそ全うしてほしいんじゃ? それとも断る事も計算の上だった?
「お父様は分かりにくい方ですが、娘を愛していますよ。フローレンスを養子にした事も、……エイベルを養子にした事も証拠です」
聖女と魔王を妹と弟に置いた事が一体どんな証拠になると言うのか、説明してほしい。
「エイベルと仲良くしてね」
母は、母親らしい事を口にした。
頷く私に、更に告げる。
「それが、頼みの綱……になるでしょう」
「どういう……?」
「歴代の悪役令嬢令息は、魔王によって殺されたとされています。理由を知っていますか?」
裏切るから、かな……? 何だかんだで、世界を終わらせたいわけじゃないとか改心したり? 自分勝手な欲求を追求して、魔王の考えから外れた行動をしての粛清とか?
「本には書かれない事も多くあります。啓教会には気をつけなさい」
それっきり、母は窓の外を見つめたまま退出せよとばかりの態度を見せた。
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