◆ 16・第三王子(中) ◆
「いい、んですか?」
搾り出すような声になった。
王子はけだるそうに、皿のプルプルしたゼリーを鷲掴み、口に運ぶ。
「いいよいいよ。めんどーだなぁ、今度は何なのさ、今回長すぎ、しかも兄上の婚約者が相手とか」
ブツブツと呟き、テーブルの上で立ち上がる。
「で? 兄上とは何が問題で別れたの? 十文字でヨロシク」
「じ、じゅう?!」
「充分でしょ」
想定外すぎる対応に、必死で頭を回す。
父との不仲?! 主義主張の相違?! う、浮気とかにしておく?! 何て言えばいいのよ!
「こ、こ……に、もめるチチあり!」
「は?」
焦ったあまり可笑しな発言をしていた。案の定、彼はポカンとしている。
だが、口にしてしまった以上はこれで押すしかない。
「そ、れ以上に、重要な事が……ありますか、殿下?」
少年は「ふむ」と顎に手をあてる。
「新たな提案、でも質問には答えてないので不合格にしたい。おまけに僕はフトモモ派だ」
性癖の不一致!? 失敗したっっ!!
「正直、そこまで別れた原因に興味があるわけでもなかったし、あんたからの情報とか少しも期待してなかったけど、誤魔化す態度が気に食わないな。やっぱり婚約止め……」
「殿下!! 週一膝枕で、どうでしょう?!」
キャメロン王子の言葉に割り込んでの発言。
彼は言葉を止めたまま、私をジッと見つめる。
「毎日」
彼が言った。
毎日は無理がある。
「週二でどうでしょう」
「いいよ」
いいのかよ!!!!
「じゃそういう事で、婚約成立」
想像以上に早い反応に、こちらが混乱してしまう。
おまけに早速報酬と宣い、地べたに座らされ、膝枕をする羽目に陥っている。少年の軽い頭を乗せて、呆然と空を見上げる。
私、何してんだ??
述懐は長くは続かなかった。
背後のざわめき――メイドたちの喧噪が思考に耽っていた私を覚ましたのだ。
振り返れば、カエルの姿。
え?
「やぁやぁ、兄上様、いらっしゃいませぇ」
そちらを見もせずにキャメロンが挨拶をする。
「君から招待してくれるなんて驚いたよ、キャメロン」
婚約解消後、初の邂逅だ。別に仲違いをして別れたわけでもないので、どう反応するのが正しいのか悩む所だ。
「別れた理由を聞こうと思いましたのでー、お招きしたわけでー、でも、今はいいかなぁ、うーん、悪くない、悪くないぞ、このフトモモ」
そりゃどうも。今後の私のスキルには、膝枕も入れて置こう。
「ヨーク侯との対立が原因だよ。ボクが意見を変えられなかったので、関係破綻にもつれ込んでしまったんだ。チャ……」
珍しい事に、カエルは一瞬言葉に詰まった。
「彼女には、悪い事をしたと思ってる」
成程ね……。
関係破綻した以上、愛称で呼ぶのは障りがあると判断したらしい。いかにもカエルの考えそうな事だ。
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