◆ 3・婚約破棄の危機(前) ◆
カエルの言葉は衝撃的だった。
衝撃的すぎて、まともな反応を返せない。
今……冗談言うタイミングじゃ、絶対、ないし……、って事は、本気って事で……?
「いやいやいや!!!! 私たちすでに成婚日まで発表してる間柄よね?! どれだけ面倒な手続きが待ってて、どれだけ面倒な風聞、いや醜聞になると思ってるの!?!? まさかあんたともあろう者が、分かってないわけないよね?!」
「うん……」
「いやいやいやいや!!!! 絶対分かってないよ?! あんた……あんた、何考えてんの?! 私はっ、ほぼ告白紛いの事を結構な人数の前でやっちゃってるわけで……どれだけ酷い笑いものになると思ってる?!?! そりゃもうとんでもないよ!!!!」
私の勢いに押されたのか、カエルは黙り込む。
冗談じゃないわ……っ、冗談じゃ……そんなの……。ここで婚約を破棄した場合、当然カエルと大っぴらに会う事は出来なくなる。お父様の事だから、家の醜聞としてはうまくやり過ごすかもしれない。いや、流石に?? 王家との破棄ともなれば……。
実家も今まで通りとは……っ。
いやいや、待て待て!!!!
何より、会えなくなる事の一番の問題は私の気持ち云々よりも、カエルの頭脳の利用ができなくなる事よ!!
「私は、破棄する気は……っ、って、まさか!!!! あんたまでアーラに?!」
何故気付かなかったのだろう。
よく考えればルーファの記憶を旅したという事は、ルーファのアーラへの想いが伝染していても可笑しくない。何よりアーラは可愛いし、イイ子だ。
愕然とする私に、カエルは一瞬戸惑った表情を浮かべ――理解したのか、首を振る。
その指に小蛇ルーファはいない。
「いやいや、アーラさんの事は関係ないよ!? ボクはルーファの事を応援しようとも思ってて」
「は?!」
いやいや、ルーファってアーラを獄に引き摺り落とすとか笑顔で言ってるような奴よ?! 恋愛問題は応援してもいいけど、どこまで協力する気なわけ?! それって同居してる私の問題にもなるんだけど?!?!
ルーファを探す視線に気づいたのか、カエルは慌てて「外で待ってもらってるんだ」と付け足した。
ガッツリ鎧を着こんだ騎士に扮してもらっているという。
まぁ、最高の護衛かもしれないけど……。
「え……っと、チャーリーは……二人の仲を応援してないの?」
話し方も窺う雰囲気もいつものカエルだ。
それでも彼は、旅を終えて何かが変わったのだろう。何がどう変わったのかは分からないが、きっと思う所ができたから『婚約破棄』を口にしたのだという事くらいは理解できる。
そういう意味では恋愛云々で動く奴じゃないか……。
「……節度ある範囲でならOKだけど」
私も冷静さを取り戻して答えた。
魔王にくれてやると約束した手前、ルーファには彼女を救い出す手伝いはしてもらわなければならない。私とてルーファが何とかするだろうという希望があったからこそ約束をしたようなものだ。
「ボクは、全面的に二人の仲を応援したいんだっ」
迷いのない言葉はいつになく強い語気だった。
瞠目する私の手を、彼が取る。
「……それが、君を救う唯一の道だと思う」
なん、て……?
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