表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/375

◆ 2・帰還者(後) ◆

 事も落ち着き、生徒たちは講堂へと避難させられている。

 今日はこのまま帰れコースだろう。なにせ大人たちは降ってわいた偽王子問題に揺るがされる事となったのだから――。


 ヴィンセントは何もしていないのに怪我人ご一行の中にいるし、スライ先輩は元よりライラも教師陣の詰問に合っている。

 私に至っては「殿下が偽者であると気づきながら、なぜ報告しなかった」とまで聞かれている。



 そんなのこちらの事情だわ。



 それなりに理解されそうな答えを返しながら、「今日の所はここまでに」という優しい教師の後押しもあって解放される。

 その頃には、カエルたちは王城に戻っていた。



 おいおい、後で話そうってのはどうなったのよっ。



 結局その日は話せないまま終了となった。



◆◇◆



 翌日の夕食前――王家の馬車がやってきた。

 もちろん、アレックスのご登場で、我が家は歓待体制で共に晩餐タイムに突入だ。父とアレックスは穏やかに互いを称え合い、見合いよろしく「後は二人で」と去っていく。

 テーブルには食後の冷菓が乗っている。

 そして現在、互いに無言のまま黙々とデザートを口に運ぶばかりで会話にはなっていない。

 すでに数十分が過ぎている。



 あんたが話そうって言ったんじゃないの……。



 このまま無言で時を過ごすのも勿体無い。


「アレックス、……思ったより元気そうね?」

「あ、……うん、食べられてたから外傷はないはずだよ」

「このカエル、自分の言ってる矛盾感、理解してんのかしら」

「ハハ……ハァ……、えーっと、むしろチャーリーこそ元気そうで良かったよ」

「どうも……」


 またも会話が途切れる。

 聞く事も話す事もたくさんあるはずだが、互いに言葉を選び続けている印象だ。

 やがて今度はカエルから口を開く。


「……チャーリー、ボクは彼の中で色々なモノを見てきたよ」

「らしいね」

「凄かったよ……まるで自分が体験したような濃密な時間だった」


 チラリと相手を見れば彼は珍しい事に、立ち上がった。食事の途中で席を立つような人ではなかったが、やはりルーファの中で過ごした時間が何かしらの影響を出しているのだろう。

 バルコニーへと出ていくカエルに、仕方なく私も続く。

 すっかり夜になった星空を見上げる。


「実はルーファの中で見たモノはルーファの体験した事だけじゃなかったんだ。ボク自身も……かつての体験を思い出したんだ」

「ん? どういう意味?」

「……ボクも、君の辿った道のいくつかを思い出したって事だよ」

「……は?」



 え? なんで????



「ルーファが……見せたって事? いや、まさか、だって、ルーファは私の辿った道を知るわけないのに、どうして? それ、偽物なんじゃ……?」

「違うよ。ボクが勝手に思い出したんだ」



 そんな事って……。



「だから、……チャーリー」


 彼が私を見つめる。

 相変わらずのカエル顔ながら、声や態度から真剣さが伝わってくる。


「婚約を破棄しよう」


 私は間抜けな顔をしている事だろう。

 呆然としながら、かろうじて言えた言葉は――。


「は?」


 一言だった。



読んでくださってありがとうございます。

ブクマ・★評価も嬉しいです♪


「面白かった!」

「今後の展開は?」

と思われた方は下の☆☆☆☆☆から(★数はお好みで!w)作品への応援お願いします。

ブックマークやイイネも励みになります!


よろしくお願いします(* . .)⁾⁾

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ