◆ 1・帰還者(前) ◆
腰を抜かしたヴィンセント王子と残されたカエル。
どちらもケガはなさそうだし、カエルの着ている服もルーファと同じココの制服だ。
これ、まさか物語のお姫様よろしくキスでもして目覚めさせるとかじゃないよね……。
流石に勘弁願いたいと周囲を見回す。
丁度、教師陣が雪崩を起こしそうな生徒たちを押しとどめている所だった。
被害状況を報せにか、スライ先輩が走る。
久しぶりのカエルだけど、どうしよう……。
ルーファの記憶を全部見るって事は、ある意味数百年かそれ以上の時を過ごしたも同然だ。私のように性格改変を何度もしてたって可笑しくない。
今までの彼とは違う性格になってる覚悟だけは持っておかないと……。
心の準備をするも、カエルの目覚めは唐突だった。
パチリと開いた目は明らかにボウとしている。
「アレッ……っ」
「殿下ーーっっ!!!!」
駆け寄る救護班に押しのけられる。
カエルはハッと我に返ったように、自力で起き上がった。同時にヴィンセント王子の方も、張り合ってか立ち上がろうと四苦八苦している。
「ありがとう、ボクは大丈夫だよ。それよりヴィンセントを……」
懐かしいカエルの声。
その手の下に小さな白蛇が見切れている。
成程……、あんなので死ぬはずないもんね?
竜の腹に当たった拳には痛みも傷もない。
まるでマシュマロのような柔らかさだったのを覚えている。ミランダとの激突音を考えれば、手心を加えてくれたという事なのだろう。
「ちょっと、婚約者様がいるんだから私の場所を開けなさいよ!」
カエルの前に跪く輩に大声で命令する。
人垣を縫って彼の前に進み出て、改めてその顔を見つめた。
今までのアレックスと違う所は?!
「……あ、アレックス、変な所……ない?」
「……あ、えー……っと、……久しぶり、チャーリー。元気そうで良かった」
パッと見に違和感はない。
何百年の疑似体験をして変わらない、なんて事あるんだろうか?
カエルだもんな……ありえるのか? ありえるかもな……。ちょっと腹を割って話してみないと……よね。
「あんた、……大丈夫なの?」
カエルは数度瞬きをして、私を見ている。驚いた顔が、いつかの――オリガの記憶を見せられた時を思い出す。再度問いかけようと口を開くと、彼は頷いた。
いやいや、しゃべらないのかよ!!
「それより、早くこの事態を片付けようか」
カエルは立ち上がり、素早く指示を飛ばした。その様は知っている彼の姿とさほど変わりはない。
彼の周辺から人がいなくなったのを見計らって進み出る。
「ちょっと、ちゃんと……」
「チャーリー、後で話そう」
先んじて言われてしまい、口を閉ざす。
なんだろう、壁を感じる気がする……。
気のせい? いや気のせいじゃないよね? あのカエルが私の発言の邪魔をするなんて……打ち切るなんて……。
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