◆ 29・足掻く者たち(前) ◆
竜と対峙し、己を顧みる。
待って、武器ない……。
チラリと左右を見れば、そこにはそれなりの実力者たるライラとスライ先輩がいるにはいる。しかし、二人の手にも武器はない。
当然だ。
今は昼食時間。武器など持ち込んでくるような場所ではないし、基本は実技の授業でもなければ武器を手にする事はない。
ミランダ、ミランダはどこ!?
今日はミランダDayだ。
私の護衛は現在、メイドのミランダと義弟エイベルで賄っている。ミランダが仕事やスパイ活動で忙しい時は、エイベルが私の護衛をするという流れになっているのだ。
もっとも、エイベルは基本、我が家でヨーク家の子として恥じない生活の為ひたすら行儀見習いをしているのだが――。
事ここに至ってみれば、前回ミランダの一撃を簡単に防いだルーファだ。運が悪いとか言えない。
そしてミランダ不在……。どんだけ運が悪いのよ!!
でも、まずは先制……!
拳を握りしめる。この場合、肉弾戦がメインの私が攻撃を与えるしかない。
うん……、自分で戦うしかない、ね……。
「〈 スコターディ 〉」
闇を纏う私に、再度の咆哮――尾が空を切る。
横薙ぎの尾に、優秀な二人は床を蹴り飛ぶ。同時に、高低の声が奏でる風の呪文。私は迫る尾に向かって、拳を繰り出した。
接触する拳と尾。
触れた瞬間に私の属性がかき消される。
う、そ……?!
「〈 スコターディ・フィーポース・……!! 〉」
間に合わな……っっ!!!!
闇の防御を敷こうにも、一歩遅い。
それは一つの呼吸の差。
まともに尾に薙ぎ払われ、息が詰まる。
勢いのままに飛ばされる身体。良くても壁に激突は免れないと、目をギュッと閉じる。
衝撃に息が詰まった。
……やわら、かい……?
「お嬢様、どういう事です? これは」
ミランダの声にパッと目を開く。彼女が私を抱き留めたようだ。
不思議そうな彼女の顔は微かに不機嫌にも見える。
彼女にしてみれば、目を離した間に自分が狩るべき命がいつの間にか死にかけていたのだから、機嫌の一つも悪くなるだろう。
こんなにも、ミランダに会いたかった事ないわっっ!!!!
たとえ、ルーファに勝てなくとも属性を消されてしまう私よりはマシだ。
「よく間に合ってくれたわっっ」
抱えられたまま、私は半泣き状態でその胸に取り縋る。
「チャーリー……っ!!!!」
駆け寄ってくるライラと先輩。
「バカがっ! 竜に属性が効くわけないだろ!」
「え? どういう……」
先輩が呆れたように頭を抱える。
「どういうも何も、竜は属性や状態異常の無効化能力を持つ。能力というより特性かもしれないが、な」
それ、この戦いで私にできる事はありません状態って事じゃ?
「こ、……こ、この化け物め!! 勇者ヴィンセント様が、お前を、たたたぁ、たぁおす、ぞ!?」
そういえば、偽聖女だけじゃなくて偽勇者もいたんだったな。しかも本人は乗り気な感じの……第二王子。
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