◆ 27・悪魔と王子(中) ◆
第一王子アレクサンダーの呪いを解いたのは聖女であり、呪いを解いた聖女は教団にいる。そしてそれは当然、フローレンスではない事になっている。
なぜ本物の聖女であるフローレンスを偽聖女と言って牢獄に入れたのかはまだ分からない。
だが今ここで、私がルーファに対し『アレクサンダー王子ではない』と言うことは、教団が立てた聖女は偽物だと言ったにも等しい。
私がしてるのは、真っ向から『聖女』と『教団』の否定……。
とんでもない事だし、教団と敵対するようなものよ。我ながら正気とは思えない……。でもこのままフローレンスごと潰されてたまるもんですか!
教団のやりたい放題にはさせないっ。
「聖女が呪いを解いたなんて、いったい誰をそそのかして情報操作したのかしら? さぁ、正体を見せなさいよ!」
声高に怒鳴る。
周囲も判断がつきかねるようにルーファを注視する。
ルーファ、あんたがすべきは、いかにもヤバそうな悪魔の恰好でココに登場することよ? 分かってるよね?! あの小蛇姿じゃ話にならないのよ!!
必死に念じるも、ルーファは俯いたままだ。
目の前の王子が偽物で、しかも悪魔が身をやつしていたとなれば、教団は立場を失うだろう。
暴いた私は憎まれるだろう。
反組織側も違和感を持つかもしれない。だが王子をカエルに戻すのだ。ちょっとした小芝居をうったのだと言い含める事は可能だと思っている。
「わかった」
やがてルーファは一言呟き、顔をあげた。晴れやかな表情だ。
そのままクルリとターンする。
一周の間に起きた出来事は、それまでの落ち着きをぶち壊すのに足るものだ。制服は黒く変色し、硬く尖った鱗へと変貌する。見た目も膨らみ、まるで内側から芽吹くように巨大化していく。
「え……?」
漏れる驚き、どよめきと悲鳴の錯綜。
部屋から駆け出ていく生徒も多数だ。
待って……?
ターン後に現れた姿は黒光りする鱗に覆われた巨体。
どこからどう見ても、ドラゴンだ。
待って待って待って?!
竜???? 聞いてないんですけど?! いや、確かに……いかにもな姿にはなって欲しかったけど……流石に、コレは……っ。
私……今から戦いますみたいな流れになってるわけで、竜と戦う感じになっちゃってるわけで? そんなの倒せたらもう勇者だよ!!!!
瞬間的に理解した。
私とルーファは周囲の視線もあり、最低限の会話しか交わさなかった。その事で今、齟齬が出てしまったのだ。
待ってよっ、ルーファの言う『ヤルことにしたんだな』ってまさか、前に言ってた『勇者』にって事? 打倒教団本格始動ではなくて?!
バカかっっ!!!! いくらヤラセ試合だとしても、これはやりすぎよっっ!? 私の成績考えてからやってよっ。
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