◆ 26・悪魔と王子(前) ◆
眠い目をこすり、学園へ赴き、授業を受ける。
そこには変わらずイケメン顔のルーファも、麗しい親友ライラの姿もある。昼休みになれば、宮廷料理人並みの腕を持つコックによる種々多様な料理がふるまわれるのだ。
何も変わらない日常。
テーブルに置かれた見た目にも美しい料理。
運んできたのは名前も覚えていない取り巻きの一人だし、片付けもそれに準じた取り巻きがすることは容易に想像がつく。
笑い声は響き、楽し気に交わされる会話と、気の置けない友人同士の触れあい。
不意に、フローレンスのいた牢獄を思い出した。
あの中にいたのが私じゃなくて良かったじゃない……。
なんでモヤモヤするのよ……!
帰ったらちゃんとお父様にいって、グレードアップをお願いするし、あの子があれ以上酷い目に遭わなくていいように私だって色々……何かはする予定だし?
なのに……っ。
「おい、どうした?」
ルーファが傍に座り、周囲が色めき立つ。
今日は約束の日だ。
彼の目にはライラが時折浮かべるような、友人への心配が見て取れる。きっとルーファには王子の才覚があるだろう。だが王子ではないし、悪魔だ。何より私は彼と結婚する気もなければ、彼の方でもない。
周囲が密やかに期待の眼差しを向けようとも、だ。
「周りの目をごまかせても、私シャーロット・グレイス・ヨークの目はごまかせないわよ? このクソ悪魔っ」
凛とした声に周囲の喧噪がピタリと止んだ。もしかしたら、口の悪さに驚いたのかもしれないが、そこは気にしないことにした。
もう『アデレイド戦記』の真似をしようとは思わない。
「立ちなさい、悪魔! そしてアレックス王子を返すのよっ!」
ポカンとしたルーファの顔。
周囲も似たような顔をしているのが視界に入る。
「……おま、……チャーリー、何を言っているんだい?」
ルーファが戸惑いの声を発する。
雰囲気はまさにカエルそのものだ。だが、違うことを私は知っているし、あんな神殿の思惑通りに事を進めてやる気もない。
聖女のお陰で呪いが解けたですって? 冗談じゃないわっ。アレックスとルーファの契約のことまで自分たちの勝手に捻じ曲げて……。だったらこっちも……それを逆手にとってやるわ!
「悪魔が取りついてることくらい、私には分かっていたわ。でも、アレックスの身が助かるなら……それでもいい、そう見逃してきた。私の落ち度ね……、呪いの解かれた王子の姿ですって? 笑わせるんじゃないわよ、私は、カエル前の王子の顔を知ってるんだからね!」
もちろん、知らない。
「その顔は間違っても、あんたみたいな顔じゃなかったわ」
ルーファは俯き、口元をゆがませた。
「そうか、チャーリー……お前、ヤルことにしたんだな?」
それは小さな呟き。
私も小さく一言「うん」と返した。
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