◆ 24・妹との面会(後) ◆
男は紙を拾い終わると、ソレを返さず神殿の中へと入っていった。
ついてこいってことね。
私もすぐに後を追う。ミランダも止められるまではついてくることになっている。だが、悪魔が神殿に入ることへの違和感を覚え、振り返る。上級でもない見習い悪魔のようなミランダにも『神殿』の威光はないらしい。
彼女は一歩分控えた位置を保って歩いている。
悪魔の侵入を許す大神殿ってなんだろ……。
最近、信仰心なくなってはいるし、神殿に入って神の力とやらに退けられる的な? そういうのを期待してたわけじゃないけど、こうも堂々と悪魔が神殿に入る様をみると微妙な気分だわ。
そこからは無言。
人気のない神殿内をいくつもの扉を越えていく。ミランダに外で待てとも言わず、男は私たちを案内していく。見覚えのある場所を行き過ぎ、階段を下り、登り――壁面を鉄格子が連なる長い長い道に辿り着いた。
あぁ、……ココか。
右も左も鉄格子。色々な嫌な臭いが混ざった異臭が漂う空間。
唇をかむ。
途中から嫌な予感はしていた。ミランダが何か言いたげに押し殺した声を漏らす。
「……ンス、さま……っ」
男が進むに任せて歩けば、鉄格子内も見える。そうして確信した。やはりここは、見知った空間なのだ、と。
敷物一つに桶が一つの簡素な石造り。骸骨のみを残した場所もあれば、空っぽの部屋もある。そして肉持つ人の姿も。
かつて私もココで生活したことがある。
死刑までの期間だったり、このまま餓死へともっていかれたこともあった。感慨深さなどない、気を抜けば吐き気がこみ上げてきそうだった。
やがて一つの部屋の前で男が立ち止まる。
「……フローレンス様っ」
牢屋に駆け寄るミランダ。
最初から分かっていたことだ。フローレンスは罪人同然の身、扱いはロクでもないだろう。牢屋の中で丸まるようにして眠る娘を見る。
制服は汚れ、髪はボサボサ、ハエも飛んでいる。
ミランダに視線を向ければ、その手が震えていた。恐らくは怒りだ。
こんなフローレンスを見たかったかと言えば、答えはNOだ。
それでもここで騒ぎを起こすことに意味はない。私は鉄格子に近づく。
「久しぶりね、フローレンス」
彼女が身じろぎし、起き上がる。
夢うつつのように振り返り、小首を傾げる。同時に、よく見たフローレンスの態度は何一つ損なわれていないことに安堵する。
「おねー……さ、ま? どうして?」
驚いたように何度も目を瞬かせる妹。
「痛いところはない?」
「特にないですけど……どうしてお姉様が、こんなところに?」
「時間がないの、フローレンス。あんたの話は質問の後よ」
すげなく言い切る。
思う所がないわけではないが、こちらは金と権力でこの密会を勝ち取ったようなものだ。立場はそれほど強くもない以上、やるべきことから終わらせなければ意味もなくなる。
私は、ミランダから言われた質問を口にした。
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