◆ 21・帰還する者(後)◆
〈え? 乗っ取られた?!〉
ルーファとアーラの関係は、私自身まだつかみ切れていない部分が多い。
元勇者と元天使、恐らくは好意を持っている者同士、そんな程度だ。
「アーラ」
ルーファが私――彼女を呼ぶ。
「アーラ……どこも違和感はないか?」
およそ悪魔らしくない気づかわしげな表情だ。
良い顔の男が心配そうに優しく聞いているのだ。敵でもない限りはこちらの対応も緩和するだろう。だが元天使アーラは強い視線を向ける。
彼女の力み具合が私にまで伝わってきた。
「ルフス、どうして……ですか? もしあなたの行動の理由が、わたしなら、止めてください。その方に身体を返してあげて、その方はチャーリーにとって大事な人なんです」
〈おお! アーラっ、前半は意味が分かんなかったけど、よく言った!〉
ルーファは目を眇める。
何かを見極めようとするように私たちを見つめる。
「アーラ、その背の……『翼』のことは、思い出したか?」
「……いいえ、全部は……」
〈ちょっと、翼って何のこと? ちょっとーっ、あんた聞こえないの? 私の能力値の問題?〉
沈黙する彼女に、ルーファが小さく「そうか」と呟いた。
「……アレックスは返してやるさ、俺様もチャーリーとアレックスのことは気に入ってるからな。そうだな、アーラが言うんだ、二、三日中には返してやるよ。新たな呪いをかけられた、呪いをかけた犯人を捜したいってしとくか?」
〈そこは要相談ね、カエル次第だわ〉
「チャーリーが、それはカエルさん殿下に任せるつもりだと言ってます」
どうやら私の発言も一応は聞こえていたらしい。今までの無言はむしろ無視していたのだと分かり、半分腹立たしい。残り半分は仕方ないと理性が納得しているのだ。
何せ、この二人は因縁深いのだから――。
「ルフス、どうしてこんなことをしてるの?」
彼は一瞬、虚を付かれたように瞠目し、かすかに笑った。
「アーラに問われちゃ答えるしかねぇな」
肩を竦める彼は跪き、私の姿をしたアーラを見上げる。
「もちろん、自分自身の為だ。悪魔になった理由も理由なら、今してる全部が俺様の為で、それが全てだ」
「ルフス……」
「あの魔女は、逆恨みからお前を縛り付けた。俺様はな、一緒にいられなくても良かったんだ……。お前さえ幸せで空の上にいてくれたなら……っ、それだけで。……地上に出ては、天を見上げて、お前の光を感じて、それだけで俺には充分すぎた。満たされていたんだ」
「……わたしは」
「……あの日、あの魔女がお前を連れ去って縛って、……自分の間違いに気づいたんだ」
〈嫌な予感がするわ〉
「お前を、見上げるだけで満足するんじゃなかった。だから、これは、……自分の為の足掻きだ」
そうして彼は顔を伏せて、ポツリと漏らした。
「ごめんな?」
その『ごめん』にはどれほどの重みが詰まっているんだろうと、思考を巡らせたのも一瞬。どうせわかりっこないのだから、私はアーラに告げた。
〈体返してよ〉
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