◆ 19・帰還する者(前) ◆
結局エイベルと私は運営サイドに別室案内後、こってり絞られた。
モニークも戻ってきて、悲鳴とも怒号ともつかない声で切々と色々なことを言った。どうやら、あの男とはいわゆる『イイ関係』だったようだ。
「……除名されなくて良かった……っ、アレは色々と支障がね……」
ぐったりと呟く私に不思議そうな視線を向けるエイベル。
当たり前に存在するルールの一つが『当該者を死なせてはならない』なのだから、当然だ。これはあくまでレベルとランクの為に催されているにすぎないのだ。
相手の力量も判断できず攻撃を加える時点で、ランクも低くなる。
どんなに強かろうが、人物判定というやつだ。
エイベルは殺してないことと、すぐに救護を呼んだ――私だが――行動が評価され、高くも低くもないCランクからのスタートとなる。
「Cって、どれくらい?」
無邪気なエイベルの問いに、微笑みで返す。
もちろん、人物評価としてもCだ。
まぁ、いざとなれば金を積んで……。
「それ、ユーシャなれる?」
ん? 今なんか、聞き捨てならない言葉が……。
「オヤジになったあの人が言ってた、オレはユーシャを目指すくらいがイイって。Cイケる?」
「全然ダメですね……」
心なしかしょんぼりとした弟の顔を見て、頭を抱える。
父は相変わらず灰色計画を進行していたらしい。こんな形で知りたくはなかったが、あの人自身に何を言っても無駄なことはわかりきっている以上、私が自分で対処するしかない。
「ユーシャに、あんたが本当になりたいと思えたら応援してもいいけど……今はもっと広い世界を満喫したらどうかな?」
当たり障りない姉の助言としては最高のものを提示したつもりだ。
弟は、首を傾げる。
うん、分からないよね……私、良いコト言ったつもりだけどな……。
私たちを見るモニークの目は複雑を極めている。
「モニーク、あの……」
「……何も言わなくていいわ……その子が『私たち』にとって価値あることは、良く分かったから」
ごめんなさい、を言うのも違うと分かっている。
それでも、言葉は探した。
「あー、とりあえず、何かしてほしいような、そういうのがあったら……言ってね?」
モニークは昏い笑みで答える。
「それなら、すぐに王子のカエル化お願いします」
あぁ……そうなりますか……。
ってか、師匠の家に行く前に邪魔されたのよね。このままだとモニーク連れで行かなきゃいけなくならない? それってルーファの手前、ヤバイよね?
すでに王子が別のヤツにすげ変わってるんだし。
「さすがに、庶民を連れて王城にはいけませんよ?」
二コリと切り返せば、彼女は肩を竦めた。
「影はどこにでもいます。私が行かなくてもあなたの動向は全て伝わりますよ」
ま、当然、城にもスパイがいるわけだ……。
「エイベル、私の婚約者を紹介してあげるわ」
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