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◆ 18・姉弟 ◆

 どうしよう、巨大な怪物を飼っているよう気分。



 なにせエイベルは魔王だ。

 だが、魔王だという感覚は見た目のこともあり、あまり意識できていなかったように思う。今も隣に立つエイベルの一挙手一投足に震えないようにするのが精いっぱいだ。


 親はどういうつもりでこの子と接していたのだろう。


 魔王は、所詮(しょせん)魔王なのだ。味方をしようとも最終的には一人で立ち、一人で世界を相手取る。

 その間に、味方だったはずの悪役連中とは大体不仲になり、魔王の力の前に消えていくのが世の常だ。これは私がわざわざ調べなくても世界が当たり前に受け入れている事実のようなものだ。

 結末の変わらないおとぎ話に近い。



 方向性としては二つあるよね?

 一つ目はひたすらエイベルを愛して愛させてズッブズブに私に堕とす。そうすれば、愛を裏切らない限り、命の保障はされるはずだ。

 二つ目は魔王討伐側に私も加わる。あくまで聖女覚醒までの生かし、その後は……って、待って、まだそんなレベルじゃないし、それができれば苦労はないか。



 そもそも私自身、魔王と聖女をどうしたいのか結論が出ていない。


「オネーサマ」


 エイベルの瞳を見下ろす。

 陽炎(かげろう)はない。


「オレを、殺したい?」


 息が止まりそうになった。

 それは頭の端をかすめた遠い先の話だ。


「でも『うん』って言われても、オレは生きたいから」



 そりゃそうだ。



「エイベル、あんた心が読めるの?」

「ううん、オフクロがさぁ、言ったんだ。オレが悪いコトをしたら殺すって」



 バイオレンス親子……。



「良いコトをしたら好きなモノ作ってくれたんだ。まぁオフクロの方が先に死んじゃったけど」


 何気ない話を装っているが、こちらが悲しくなってくる。

 きっと母親は、この怪物みたいな子をそれでも愛していたんだろう。そしてこんな怪物みたいな子でも、母親から何かを感じ取ってはいたんだろう。

 それが分かったところで、私のプラスになるわけではないが少しだけ胸が温かくはなった。


「じゃあ、今後は私が指針ね」

「シシン?」

「あんた、良いコトと悪いコトの区別がまだ分かんないんでしょ? あんたのお母様が良いコトをしたとか、悪いコトをしたとか教えてくれてたわけだし」

「……え、そうなの?」



 おい!!!!



「言われてみれば、そっか、良いコト側が多い方がいっぱい食べられるなってくらいだったけど」



 親の苦労なんて子供には伝わらないものよね。



「これからは私が良いコトをしたら手料理をたべさせてやるわ! 悪いコトしたら食事は抜きよ! で、今回のは」


 チラリと運ばれていった青年と去っていく治療師たちを見遣り頷く。


「良いコトね。私の嫌な気持ちをあんたが気を回してくれたわけだし、ちゃんと生きてるみたいだしね」

「……オネーサマ」


 やっと分かり合えた気がして微笑む。



「オネーサマって料理、ちゃんとできるの?」



 このクソガキ。


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