◆ 9・反組織の条件(前) ◆
「そのババァが決定権を持つ指導者です」
モニークが言う。
最悪だ。やらかした……!!
慌てて取り繕うための言葉を探すが、思いつかない。
あんたね! 教えてくれてもいいじゃないの?!
〈え?〉
あんたは心読めるでしょ! あの人が指導者って分かってたんじゃないの?!
〈……しどーしゃ〉
ダメだコイツ……!
結局頼れるのは自分だけなのだろう。
老婆は一見どこにでもいるタイプにみえる。つまりはただのお婆さん。孫が十人いると言われても納得するし、話が長くても『やっぱりね』とおもうだろう。
「お婆さんのような人がどうして反組織に? ありがち家族がやられた系のアレですか?」
今度は丁寧な声色で聞いてみるも、老婆は首を振る。
「……と、とにかく……、私も加えてください、金は惜しみません! えぇ、金だけは父に言って出させますし?! このエイベルの使用権だって貸し出しますとも!」
今度はエイベルが首を振る。
「それ、オネーサマを守るのがやりにくい」
「いいのよ、エイベル。あんたを貸し出してる間はミランダ連れて歩くから」
「……アレで、だいじょうぶ?」
ミランダとて悪魔もどきなのだ。人間に後れをとることはないだろうし、悪魔vs悪魔になる可能性も低いのだから問題はない。
「大丈夫よ。だからオネーサマのために、オネーサマの為に何でもしますと言っておいて!」
「まぁ……たぶん、する」
エイベルの言葉に老婆は頷いた。
「シャーロット・グレイス・ヨーク、あんたの事は最初から調べておったよ。聖女の姉、悪役に割り振られた人間、魔王の仲間、呪われし王子の妻」
うわぁ……肩書きが、ヤバい……。
そして言わせてくれ、まだ妻ではなく婚約者だし、魔王の仲間でもない。
「こちらに入るなら、条件を一つ。呪われし王子に呪いをかけてくること」
な、に?? えーっと、今って王子はルーファなわけだけどカエルにしてこいって? 冗談でしょ? そんな能力あったら私が魔女魔王だわ。
ちらりとエイベルを見る。魔王である彼ならできる可能性があるのかもしれない。
「エイベル、人をカエルにできる?」
「……皮を、むこうってこと?」
「……ちょっと意味が分からないんだけど?」
「皮をむいたら、肉は」
「はーーい!!!! もぅいいですぅぅうーーっ!!!!」
私は察して叫んだ。
残念ながら魔王にもできないことはあるらしい。ならばルーファと話して、カエルの帰還がいつになるのかを話す他ない。
考えてみれば、今の王子は周囲からみれば呪いが溶けたアレックスだが、本来のアレックスはカエルのまま食われているのだ。
吐き出してもらえばカエルはカエルのままなわけだ。
「分かりました。王子をカエルにしたら、私も加入ってことでOKですね?」
重々しく頷く老婆。
笑いがこみ上げてくるのを押さえ、私は力強く応じた。
「カエル了解!」
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