◆ 4・襲撃の姉弟(前) ◆
わかっていた事だ。
ライラに相談した所で結論など出るはずもない。それくらい、エイベルは可愛げがないのだから――。
せめて可愛げのある弟が欲しかった……。
ライラと朝食を取り、一緒に馬車に乗り込む。御者台にはエイベルも乗っている。
彼とて少なからず気分を害しているかもしれないが、こちらとて嘆きたい時があるのだ。
「ねぇチャーリー、今は忘れましょう。ミランダからの連絡もそろそろじゃない?」
「……うん」
首尾よくいけば、明日の夕方には反組織との顔合わせがなる。
でもそれもうまくいけば、だし。そもそも反組織に入ってからの方がストレスかも。
まぁ、あの可愛げのない顔を見続けるよりはマシか。
ミランダが戻るということは、エイベルの護衛が外れるという事だ。問題といえば、その後のエイベルとヘクターの友好関係をどう潰すかくらいなものである。
「オネーサマ」
走っている馬車の扉が開く。
風を受けながら、エイベルが手を差し出した。
「もうすぐ、転がる」
はい??
何を言っているのかと、問うよりも早く車体が大きく揺れる。
つんのめる体を支えたのはライラだ。さすがは現役で傭兵的な事をしているだけはある。
「な、なんなの……?!」
叫ぶ私に、弟がブレない手を再度示す。
「早く、二人ともいっしょでいいから」
ライラが私の腹に肩を入れ持ち上げる。
「ら、らいら?!?!」
「降りますわ!」
「ん」
二人は私を無視して会話し、空いたドアから身を躍らせる。私は慌てて目を閉じた。
◆◇◆
結論から言えば、さっきまで乗っていた馬車が燃えている。
御者は間一髪エイベルが放り投げたという。足を骨折した御者を見つけたのはライラだ。
「お嬢さん方、大丈夫ですか……!」
年若い治安維持を預かっているらしい兵が駆け寄ってきた。
イノシシ騒ぎからこうした巡回の兵士が街中を歩いているのを見かけるようになった。貴族ではなく一般市民であるのは、被害の出た地域が普通の市街地だったからだろう。
「だいじょ……」
ぶなわけない、と怒鳴るよりも早く――弟の手が私の口を塞ぐ。
「平気。オネーサマにもツレにもケガないから」
なんで、あんたが答える!?
兵士はエイベルを見て、驚きの声をあげた。
それは短い悲鳴で、すぐに飲み込まれる。
「こ、これは、……確かに、君がいるなら、安心だね……!」
何、この反応。
視線の意味を読み取ったのか、エイベルが答える。
「オレ、有名なんだ。人殺してるから」
え? 初耳ですが????
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