◆ 21・情報共有の順番 ◆
まず整理しよう。
妹は聖女で、弟は魔王――どちらも父の画策により『灰色』予定。
父は事情通で、全て筒抜けだ。
うん……人生とはこんなにも事件が付きまとうものだろうか?
現実は直視したくない事ばかりが襲い来る。それらは平気で追い討ちもかけてくる。
〈んー、たぶん、分かったタイミングが一緒だっただけだよ!〉
そんな事は分かってる!!!! それでもたそがれたい気分にもなるのよ! 元天使のイイ子には分かんないでしょうけどねぇええ!!
やつあたりの自覚はある。
相棒に怒鳴ったお陰で私の心も気が済んだのか、落ち着きを取り戻していく。
「いい面を見ようと思います、お父様」
思った以上に冷静な声が出せた。
少なくとも『魔王』が見つかり、手元にあり、言いなりになって貰えそうな立場にいるのだ。これを利用しない手はないだろう。
ここからは『エイベル』をどれだけ懐柔できるかにもかかっている。問題はそこに父の意思がどれほど介在するのか、である。
「新たに引き取る『息子』を『騎士』に……というのは、教団のスパイに仕立て上げる意味も含んでますよね? 情報は共有していただけますか? もとい、私も彼から情報をいただいて良い……と思っていいんですよね?」
父は朗らかに笑う。
「ははっ、勿論だよ。父様は元々、お前を特別扱いしてるじゃないか。私の『子』だもの」
嫌な言い方をするものだ。
父の子供たちへの対応をあげつらえば、養子への仕打ちは待遇の良い奴隷に他ならない。
かと言って、そこは今……問題じゃない。奴隷云々で、干からびた生活してたら何かしら反発しても良かったけど、どっちかっていうと使用人側の問題の方が大きいのよね。
「じゃあ、エイベルはどうなの? 私たちのスパイ役やれるの? ってか、やる気はあるの? 教団運営の神殿騎士を目指して、そこで私たちの欲しい情報を奪ってくるのよ? できるの?」
エイベルは子供らしく首を傾げた。
「うばう……ソレはできる。やる気もあるよ」
「流石は魔王! お父様より先に私に報告してくれたら最高だけどね!」
ミランダとミルカが呆れ顔をしているが、無視する。
「ソコは二人で話せば?」
「え? 金手元は私だよ?」
少年は私にペコリと頭を下げた。
「そういうコトなんで、後になる」
「いや、待って待って! こう見えて私って、次期国王の嫁になる女だから!! 将来はお父様よりも地位が上になるのよ?! 私の言い分を聞いた方が賢明よ?!」
「こら、娘1。次期国王にはならないって殿下は言ってたじゃないか」
くっそ、どこまでも余計な事を!!!!
「ところでナニを取って来ればいい?」
「……物を盗んでくる的な言い方止めて」
「え?」
私が想像していたよりも、すさんだ生活に足を突っ込んでいたのかもしれない。
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