◆ 19・灰色(後) ◆
「待て待て待ってーっ!!!!」
流石にお父様をどうかしちゃうのは問題よ! そりゃ私の色々の状況を作った元凶っぽいけど、だからって……!
「まだはっきりさせないといけない事がいっぱいあるのよ!? 教団と反教団とか、どうやって魔王を見つけたのかとか!」
慌てて止めに入る。
ミランダはうんざりした顔で私を見た。
「痛めつけた後に聞いてはどうです?」
痛めつけるくらいなら……?。
少しの逡巡は無言という形で表れる。それはミランダにとって充分な時間だった。
振りかざされた腕が、丸太で作った棍棒のような形に変貌する。
「……まっ……!!」
しなやかな風を切る音。
図らずも凝視した先で、彼女の腕を阻む男――の、子。
棍棒状の黒々しい塊を掌で掴んでいる。
え、エイベル?!?!
「……とっくの昔に王国最強など、譲っとるわい」
ミルカの言葉に少年は一つため息。同時にビシリと軽い音が響き、ミランダの腕にヒビが走る。魔王の称号は伊達ではないらしい。
「これ、どうしたらいいの?」
何……、なんで、エイベルが?! って、そうか……っ、お父様は金手元! エイベルの立場ならお父様を守って当然……私でもそうするわ。
〈離れて!〉
アーラの叫びに慌てて、外への扉に駆け寄る。ドアノブをしっかりと掴み叫んだ。
「ミランダ、離れて! なんか危険!!」
一拍おいた忠告に彼女も従い、距離を取る。
エイベルは後追いせずに手を離した。
「どういうつもりよ、エイベル。あんたが絶対服従すべきは姉の私でしょ!」
彼は父を指さす。
「カネ」
そして、私を指さす。
「アネ。アネにカネはないし」
確かにその通りだ。私が自由になる金など、たかが知れている。
「これからメンドー見てもらうし?」
エイベルは父を見る。
その目は確認の様相を呈している。父は鷹揚に頷いた。
「この場合はお前の判断が最適解だよ。お前の面倒を見るのは私であって、娘1じゃないからね。でも……それ以外においては、娘1がご主人様だよ」
その言い方じゃ奴隷よ。
〈お父さまの中では『ドレイ』みたい〉
弟じゃなくて、奴隷なの?! 罪が重なっていく気がするわ! いや、悪役令嬢としては正しい姿だけど。
「とにかく、魔王に邪魔されちゃ話が進まないわ! はっきり言って……私の人生に、お父様の灰色計画は迷惑なのよ!!!!」
父はキョトンとした顔で私を見る。
何が悪いのかすら分かっていない顔だ。
「全部……筒抜けなら、言葉を選んでもしょうがないし……言っちゃいますけど! お父様のその行為が、私の死の何回か、何十回かは影響してると思うんですよね」
「そうだね?」
「良心があるなら、『灰色』云々止めてもらえません? 聖女は今更性格変えられませんし、せめて……この『魔王』はしっかり『魔王』に育ってくれないと困るんですよ!」
「……でも、オレ、シンデンのキシになるらしい。申し込みしたって言ってたぞ?」
なんですって???? キシ? シンデンの? ……騎士? 神殿の????
私は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
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