◆ 16・対峙と追及(後) ◆
「お父様、『聖女』と『魔王』を取りそろえて、どうなさるおつもりですか?」
父を楽しませる必要はない。
親子と言えど共感できるコトは少ない間柄だ。聖女や魔王を含めた『悪役』についてどれほどの情報を持っているのか、また三者を手中に収めた理由を問いただすべき場面だ。
どんな思惑があっても、こっちとしては聞きたい事を聞くだけよ!
「娘1、『どうなさる』ってお前は私がどうすると思っているんだい?」
「そりゃ……」
父は政治と金が全ての人間だ。女は道楽にしかならず、子も道具だ。
そんな父がやりそうな事といえば、『魔王』で人心を惑わした上で『聖女』という希望でコントロールするくらいしか思いつかない。
お父様の中での私こと『悪役令嬢』の立ち位置は、両方をうまく差配させる為の『歯車』だろう。
本音を話す間柄でもないのに……でも、ここははっきり言うか。
「お父様による世界の裏支配ですかね、世界掌握への道みたいな? もっと金儲けと権威をって感じですかね」
「ふんわりしてるね」
「じゃ、世界を裏から牛耳る為って為の行為という事で明言いたします」
「うん、違うね」
沈黙が訪れる。見つめ合う私たち親子を、ミルカとミランダも呆れたように見つめる。
エイベル少年はさっさとテーブルにあった果物に手をつけている。
ちょっと、アーラ! いるんでしょ? 教えてよっ、こんな時こそあんたの能力の出番よ! お父様は今、何を考えてるの!?
元天使の能力を使わない手はないとばかりに聞く。
〈なにもないよ〉
何もないかどうかは、私が判断するわ。
〈なにも、考えてないよ〉
「お前の中での父様像が見えて面白いけれど、残念ながら父様はそういう俗物じゃないんだよ」
「……はぁ」
どの口がそんな事を、とは流石に口にはしなかった。代わりに――。
「で? お父様はどうなさる予定なんですか? 本当に裏世界支配には興味ないと?」
「ないよ、面倒じゃないか。魔王が勇者に倒されるように、悪役の末路なんて行きつく先が見えてるよ。父様は痛いの嫌いだからね」
私、その『悪役』なんですけど?!
「でもね、父様はこの世に善悪なんて存在しないと思ってるんだ」
「はぁ」
哲学に興味がない私は、聞く態勢を半分失った。
「父様は全てが灰色でいいと思ってるんだよ。だからね、父様は決めたんだよ。白い『聖女』に、黒い『魔王』も全部『灰色』にしちゃおうと思ってね」
「……は?」
なんだ? 今、なんかめちゃくちゃ……聞き捨てならない事を、言ったような?
「分かるかい、娘1? 分かるようにもう少しだけ、言おうか」
「……お願い、します……?」
「黒い『聖女』に、白い『魔王』を作ってみようって思ってるんだよ。父様、不器用な所があるからお前にも手伝って貰おうと思っててね」
何……?
黒い聖女に? 黒い?? 聖女を黒く??
途端に蘇るルーファの言葉。
『あの聖女は聖女っつーより、闇の気配が強すぎるんだよっ』
かつてルーファは天使のおっさんに言った。その理由がココにあるのだとしたら――父が原因なのだとしたら。
「お父様、どこまで……考えて、の……行動ですか?」
震えずに声を出せたか、自信がない。
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