◆ 14・対峙と追及(前) ◆
馬車からは赤焼けの空が見える。
向かいはミランダ、隣には新規の弟エイベル。馬車は一路、地図の場所へと向かっている。
「はぁ……」
口を出るのは溜息ばかりだ。家を出る直前まで、母と言い合いをしたのだから当然だろう。
母が心配するのも無理はない。
だがエイベル少年の説明を含め、今回の『誘拐』話を納得させるにはいくつもの段階が必要になる。最終的には「全面的に任せてほしい」とだけ伝え、錯乱気味の母をメイドたちに押し付けたのだが――。
どう説明したら……。
実は私って『聖女フローレンス』を輝かせる『悪役』だったんです、とでも言えばいいの? 立場上『魔王エイベル』と仲良くしたいので弟にして欲しいって?
「無理があるわ……」
静かに鎮座する薄汚れた格好の少年を見つめる。
「ねぇ……、あんた、エイベル君、いや、……魔王様。『君は魔王です』って言われてどうだった? ってか、ソレを信じてるの?」
エイベルは相変わらずの冷静さでこちらを見上げる。
「どっちでもいいよ。メンドー見てくれるなら」
「魔王でも?」
「いいよ。オレ強いしナットクする」
子供の言う『オレ強い』発言にはどれくらいの信憑性があるだろうと悩むも、彼は魔王だ。本当に強い可能性は充分にある。
「例えば?」
促す。
「たとえ?」
「凶暴動物を一撃で即死させました、とかよ。そういうのよ」
「ドーブツとは仲良いよ」
「建物を一撃破壊とかは?」
「……ベンショーできないコト、やらないよ」
この子……魔王なんだよね?
「なんか悪い事の経験ない?」
「うーん……なんだろ」
悩むエイベル。
ヴィンセント王子よりはマシかもしれないが、所詮『普通』の子だ。彼を『魔王』に仕立て上げる事は大変だと分かる。
どっちにしろ苦労しかないのね……。
〈この子……、悪い子〉
ん? 天使のあんたが言う『悪い子』ってどんなレベルよ。それこそ信憑性ないわ。
「まぁ、いいわ」
どちらにしろ、私には魔王育成の義務が掛かってくるんでしょ。受け入れるわよ、受け入れればいいんでしょ。
エイベルをしっかりと見て、人差し指を突きつける。
彼は指を凝視した。
「弟になったからには姉の命令、……いや、私の命令は絶対よ!」
フローレンスとは敵対関係となるのだ。
彼とフローレンスが親しくなるのはまずいと思い至る。
いっそ仲が悪いくらいが丁度いいかも?
「私の事は『お姉様』と呼びなさい。フローレンスの事は……『姉2』で」
「え? あねに?」
「そうよ。そしてフローレンスとは仲良くする必要なしです、決定です。大丈夫、お父様の基本が『娘1』と『娘2』なんだから」
「……へぇ」
「エイベル、返事は?」
高圧的と思われても構わないとばかりに言えば、相手は素直に頷いた。
「わかったよ。……オネーサマ?」
「よしっ」
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