◆ 13・弟の誕生 ◆
「ま、おう?」
思わず繰り返す。
エイベル少年は頷いた。
「そう。だからオレはあんたとイイ関係にならないといけないらしい」
「誰が、言ったの?」
「お前のオヤジ」
お父様?! どういう事……、お父様は何をどこまで知って行動してるの?
……ってか、どう見てもただのお子様なんだけど、本当に魔王なの?!
〈うん〉
うん?! 魔王ですよって?? あんた、そう言いたいの?!
〈うん……〉
元天使の言葉だ。信憑性も出るというものだ。
「私と良い関係って言うのは……私が『悪役』に割り振られてるからよね? それを知ってるって事よね、お父様は」
いつからなのか、どうしてなのか、疑問はたくさんある。だが、それらはまとめて父に聞くべき事だ。
今、言うべきは――。
「能力の説明お願いします、魔王様」
少年は首を傾げた。
◆◇◆
聞いてみても彼に言える事は何も無かった。
分かった事って言えば、『隠し子ではない』くらいね……。しかし、魔王ってヴィンセント王子じゃなかったのか、まさか本当にヴィンセント王子が勇者って事はないよね?
彼の言い分に寄れば、健やかな母子家庭はイノシシの出現によって壊された。
食うに困った頃、ヨーク侯爵なる我が父が現れ、彼を拉致軟禁。『君は魔王だ』の言葉から、面倒を見る代わりに私こと娘のシャーロットと良い関係を気付けば死ぬまで贅沢させてやると言われたらしい。
「つまり、円滑な支払いと贅沢な暮らしの為の公的地位って事で『弟』になるわけね」
「うん」
エイベル少年は頷く。
フローレンスとて同じだが、社交界というものはとかく色々と噂が飛び交うしロクでもない風評被害も大きい。精神はゴリゴリとすり減り、愛想笑いばかりがうまくなる。
贅沢はできても、心の平穏は買えない世界だ。
「あんた、本当に侯爵家の息子になるのOKなわけ? 地獄に足突っ込むようなもんよ」
「食べるのに困る事の方がサイアクだよ」
ルーファと気が合いそうな体験してるわね……。
「いいわ。私はシャーロット・グレイス・ヨーク、あんたの姉になるし、魔王を支える悪役参謀にもなるわ。手を組みましょう!」
「……なんかカンチガイしてない? 腹が減りすぎないくらいに、普通な生活でいいよ」
おいおい、魔王に魔王やる気がないってどういう事よ!!!!
こっちはシャーロットの聖女覚醒の為にも魔王に魔王してもらわないとっていうか、……え? いやどっちが先だ?
聖女の覚醒を促す役割が悪役令嬢たる私だ。
悪や闇が蔓延し、聖女が覚醒し勇者を選ぶのだから――魔王の方が先に覚醒に近づくべきだろう。
鶏と卵たいな気分になってきた……。
そこでエイベル思い出したように追加する。
「あ、お前のおふくろへの『セットク』も『頼む』って言ってた」
「お父様ーー!!!!」
言葉で呪詛が成り立つなら、いくらでも吐き出したい。
あの母に、可笑しな疑惑を生ませずに息子入り――どう考えても骨の折れる作業だ。
「じゃ、今日からよろしく。コレ、お前のオヤジのいる場所。オレが捕まってたトコ」
手渡された紙は、手触りからして上質。
開けば流麗な文字。
全てお見通しなわけね……いいわ、いいわよ? そっちがその気ならこっちだって、対決してやろうじゃないの!
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