◆ 12・誘拐犯(後) ◆
混乱はすぐに収まる。
彼は嘘を付いているとしか思えない。
「嘘だわ。お父様がそんな危ない橋を渡るとは思えない。誘拐したい子がいたら、買うわ!」
「……スゴいフォロー」
誘拐はリスクが高すぎるし、金はある!
「で、お父様と引き換えに何が欲しいの? はっきり言いましょう。こちらは……金で解決したいから、金は出すって方針です!」
今度はこちらの意図も隠さず伝える。
「だから、人の話。……金じゃなくて弟」
「一括ではなく、長期的な支払いでって事ね? 確かに一気に使っちゃう場合あるもんね。ちなみに月々いくら?」
犯人は短絡的に行動を起こしたわけではなく、知能犯なのかもしれない。
この少年と契約を結んだ別の存在が裏で糸を引いている可能性もある。対処は戻った父がすればいい。私の立場としては父を『円滑に』取り戻す事だけで十分だろう。
「父を戻してくださるなら、OKなので値段を仰ってください」
ニッコリ微笑む。
少年は嘆息する。
「つまり、あんた……弟はイヤってコト?」
なんだろう? 『弟』って肩書きを求めてくるって事は、跡取りになりたいって事かな。私のOKを貰って『弟』になりたい理由……って?
それは天啓のように閃いた。
隠し子?!
隠し子だったのか?! 確かに……お父様と同じ青い目!!!! 私の、お爺様譲りの赤毛と似た色合いの髪! 目つきは悪いけど、将来有望そうな顔立ち!
「あ、ありえる……っ!!!!」
少年が首を傾げる。
誘拐犯として他人様の家に脅しにきたにしては、子供ながらに肝が据わった言動。あらゆるものが、『そう』みえてしまう。
「あんた、名前は……?」
「エイベルだけど?」
いい名前じゃないか……異母弟、受け入れよう。
「……わかったわ……エイベル、受け入れます。ただ一つ……一つだけ忠告しておきます。『弟』になるという事のデメリットについて」
「でめりっと?」
「うん、習い事で死にかけます」
言葉を失う相手に、たたみかける。
「侯爵家の跡取りとはそういうものです」
「……あんた、また変なコト考えてない? めんどう。説明する」
なんて失礼な言い方だ。弟になった暁には奴隷真っ青レベルでこき使ってやる!
「オレはおふくろと二人暮らしだった。おふくろはお前のオヤジを守ってたらしい。イノシシと戦った時のケガで死んだ」
「イノシシ……!! あのモンスター?! アレと戦ったの!?」
「そう。お前のオヤジは礼に引き取るって言ってる。オレはいらないって言ったけど、来てもらわないと困るって捕まった」
事情から鑑みても、父が引き取ろうとするのも理解はできるし否やはない。まして実子なればこそ、これを機に今までの分の埋め合わせもしたいのだろう。
私の許可など必要ない。父の一存で決めてもらって充分だ。
「よく分かったわ。義理の弟ができる上での実子の理解って意味でも、OKよ。条件を提示しろって事だけど、ナシでOK。受け入れます。って事で、父の所に案内してもらえるかしら?」
「……オレが捕まった理由」
「うん?」
少年は私の前まで歩いてくると、一言。
「オレが『魔王』だから」
読んでくださってありがとうございます。
ブクマ・★評価も嬉しいです♪
「面白かった!」
「今後の展開は?」
と思われた方は下の☆☆☆☆☆から(★数はお好みで!w)作品への応援お願いします。
ブックマークやイイネも励みになります!
よろしくお願いします(* . .)⁾⁾