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◆ 11・誘拐犯(前) ◆


 部屋の前で深呼吸する。

 相手は要求があるから、ヨーク家に来たのだ。いきなり命を狙われる事はないし落ち着いていい、と自分に言い聞かせる。

 こちらの気持ちを無視し、ミランダが戸を開ける。



 え、これが誘拐犯の一派?!



 見慣れた室内に佇む人物。

 思っていたよりもずっと若い――むしろ幼い。

 くすんだ赤毛は襟元でざっくりとハサミを入れたように乱雑、青い三白眼の下には化粧を間違えたようなクマ、誇張して言えば骨と皮の細い体。年を推定するに、十代前半だろう。

 膨らみのない幼い体からは、性別が見て取れない。



 只の使いっ走り、かな? だったら、斧を構えるほどでもなかったか。



 後ろで戸が閉まる。

 室内には二人っきりとなった。同時に性別不明の子供が口を開く。


「お前がシャーロットか」


 排他的な口調――目つきの悪さ相応に、ガラも悪そうだ。

 一つ頷けば、視線はすべるように斧へと移る。


「そのオノ。それでオレと対決でもする気か?」

「護身用です」

「オノが?」

「これでも淑女なので……犯人と一人で会う行為に怯えていたんです。何故か私をご指名と伺ったので」


 少年はじっと私を見る。

 斧を手放す気は欠片もない。座る気もなければ、すぐに脱出できる扉から遠ざかる気もない。


「お父様を誘拐したと聞きました。要求を仰ってください。我が家の富も名声も父の威光の賜物。父がいなくては一カ月と持たず落日を味わうでしょう……ですから、異常な要求でない限りこちらも応じる用意があります」


 幼さ故に言葉の内容が分からずとも関係ない。



 ウチが金持ちである事、父の為に金出すしかないって思ってる事、この二点が伝わればいい。

 さぁ、いくらだ!?



「お前のオヤジに捕まったから来た」



 は? なんて? 捕まった??

 まぁ、……細かい事はおいといて、こちらのスタンスとして金で解決しかない。



「父はそちらにいるんですよね、聞きました。要求を仰ってください」

「お前とのコーショーになる。その後、帰る」


 話がどうにも噛み合わない。


「私との交渉? 命を差し出すのは無理ですよ」


 きっぱりと告げる。

 相手の狙いがヨーク家への要求ではなく、私個人だという事が確定した瞬間だ。過去の色々が頭に浮かぶ。



 誰かの弟妹パターンか? 兄姉の復讐で私を?

 ってか、そうだとするなら……お父様、こんなガキに捕まるってどうなってんのよ。



「お前が弟に求めるジョーケンを言え」

「……ん?」



 んん?

 んんんん??



「ちょっと待て、意味が分からない。弟に『しろ』って言ってんの? お父様を誘拐して私への要求がソレ? 意味分かんないっ、ってか、そういうの私に言う事? そういうの親次第なんじゃないの? なんで私に? いや、待て待て色々前提条件が壊れてる気がする。面倒だから金にしてほしいのに、なにこのガキ」

「……ホントにヤバい女。人の話、聞いてないし」

「どういう意味よ!」

「そのままの意味」


 少年が呆れたように突っ込む。

 我を取り戻し、淑女らしくスカートを押さえてお辞儀する。


「混乱しすぎました。それで、どうして私に? そういう事は拉致済みの父の方に話をするのが早いかと」

「ユーカイされたのオレの方。説明、だるい。話、まとめると『ヤバい娘シャーロットにOKもらって来い』って」



 おい、オヤジ様……『ヤバい娘』ってなんだ!!

 しかも誘拐された方?! 一体、何がどうなってるの?!

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