◆ 2・忍び寄るもの(後) ◆
「娘、……そこは王子の心配をしてあげよう」
父のもっともな指摘に頷く。
私にはルーファだからという思い込みがあるが、周囲は違うのだ。一応は言うべき言葉もあったと、追加する。
「あぁ、そうですね。無事ですか?」
「勿論さ! お前の婚約者は無事だよ!」
「で、犯人は分かってるんですか?」
「娘、お前ドライだね……」
父は大仰に顔を伏せる。
いちいち芝居掛かった態度が腹立たしい。
「でもね、残念な事に犯人不明なんだよ」
「そうですか、残念です。目星もなしですか?」
「大きな声では言えないけれど、父様にはアテがあるよ」
なら、さっさとそこを話してほしい。
〈チャーリー、おとうさまは何かを頼みたいみたい〉
何かって?
〈たくさんの考え、いっぱいで早いの、何かは分からないの〉
アーラが心を読み取れないのなら、この場を辞する為にも父の口から用事を聞くしかない。
どうせ、タヌキな父の事。口で本音を言うはずもないし、教えてくれるはずもない。
「お父様、仰って。わざわざ私を呼んだわけですし、何か特別な理由があったのでは?」
「特別な事は無いよ、お前の愛する婚約者の一大事だからね! 報せてあげようと思ったのさ。気になるだろう? 会いに行きたいだろう?」
なんだソレは。
父にも告白劇の噂は届いていたのだろう。それを盾に、見舞いだかご機嫌伺いだかに行けというのだ。
素直に頷く気にはならない。
ましてルーファである以上、100%無事だと分かっている。
「恥じらう乙女なお前の事だ、言い出せないかなと思ってね、娘想いな父が口実を与えてあげよう」
勝手に進む話を止めるべきか悩んだのも一瞬。早々に了解の意思を告げる事にした。
「あ、いえ大丈夫です。行きます、ご機嫌伺い」
「照れなくてもいいんだよ。この封書を殿下に届けておくれ」
私の言葉、完無視?! 口実が本題だったパターンね?!
苛立ちを抑えて、せめて要望を伝える事にした。
「では、お父様。ついでに、殿下の周辺環境を憂いて神に祈って来ようと思います」
神殿や啓教会を探るには、父の地位を借りるのが手っ取り早い。それと分からず協力させるには良いチャンスかもしれない。
そうとなれば、チラつかせるべきは権力だけじゃ足りないわ、金がいる!
「ついては教団に多額の寄付……いや、えーっと、心づけのようなアレを……」
しどろもどろ告げる私に、父は大きく頷いた。
「分かるよ、娘! お前の気持ちはよく分かったとも。神に金で都合を付けたいんだね、いいよ! その考え方は好きさ!」
この人、本当に国の重鎮だろうか……。
読んでくださってありがとうございます。
ブクマ・★評価も嬉しいです♪
「面白かった!」
「今後の展開は?」
と思われた方は下の☆☆☆☆☆から(★数はお好みで!w)作品への応援お願いします。
ブックマークやイイネも励みになります!
よろしくお願いします(* . .)⁾⁾