表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/375

◆ 30・よんどころない事情(後) ◆

「両親の事を元として、私は反啓教会派からは象徴のように扱われ始めました。そんな私を引き取り、彼らとの距離を適切に保とうとしてくれたのが……ミルカです」

「あのままでは二の舞になりかねんしの。かつて愛した女の娘じゃし」



 確かに、恩人っぽさある。



「でもそんな生い立ちのミランダが、なんで啓教会に? まるで間諜みたいじゃん」

「そうですね」

「いや、『そうですね』じゃなくて……」

「そうですから」



 え?

 まさか……本当に? スパイって事?! え? 私ってスパイがバレない為にって程度で殺されたって事?! いや勿論、スパイバレはヤバイけどさ……うん、なんだろう。釈然としない。



「ミランダ、あの、もしかして、その、今までの」

「お嬢様……私にはリスタートの記憶がありませんから、過去の因縁をつけられても分かりません。ただのスパイ隠しに殺した可能性もありますね」


 サラリというあたりが憎らしいが、ミランダらしさもある。


「カエル王子とあなたを結婚させるわけにはいかない。これは教団だけではなく、反教団側の総意でもあります」

「両方なの? なんでよ。あっちのデメリットはこっちのメリットってならないわけ?!」

「結局は、託宣の問題じゃな」


 ミルカの言葉には重みがあった。


「お嬢様はヨーク家が親啓教会派である事を知っていましたか?」

「……確かに、教会には寄付すごいっぽいけど……」



 あのお父様に、宗教観などあるだろうか?



 父が多額の寄付をするくらいなのだから、メリットの問題だろう。


「どういう意図があろうとも、これ以上アレクサンダー殿下に花を添えるわけにはいかなかったんです。今までは、お嬢様もカエルと蔑んで見えました。大衆の前で告白劇をしたと聞いた時には何の冗談かとさえ……ですが、あの、燃やす直前……お嬢様の目を見て分かりましたから」



 あぁ、確かあの時ミランダは……『勿体ないほど出来た方』だとカエルを褒めて……、私……なんていったっけ……でも肯定したのよね?

 あれで私がカエルとの結婚を嫌がってないと分かって?



 ミランダがテーブルに豆尽くしの食事を並べていく。

 彼女の料理の腕は認めるところだが、豆のスープに豆のサラダに豆で作った疑似肉では――流石に、食卓から遠ざかりたくもなる。

 このままでは豆のケーキまで出てきそうだ。

 ミランダも食卓について、ふと気づく。


「ミランダとこうして食事をするのは初めてね」

「……メイドですからね。ここは我が家なので文句はなしでお願いします」

「いや別に文句じゃなくて、普通に新鮮というか……いえ、何でもないです」


 ミルカはカトラリーを手に取り、スープを掬った。私も同じく一掬いして口に運ぶ。

 野菜と豆を煮込んだスープには甘みがある。

 黙々と食事を続ける中、脳内で声がした。



〈おはよう、『チャーリー』〉



 懐かしささえある声はアーラのものだ。



 アーラ?!

〈ムリしたから、寝ちゃってたの〉



 ずいぶん音沙汰がないと存在すらも忘れていたが、彼女はまだ私の中にいるのだ。

 そのことにホッとしたのも一瞬だ。


〈あのね、今代の聖女と話したいんだけど……〉

 聖女……? そういえば……フローレンス!!!! 普段からの関係が希薄だからすっかり忘れてたけど、そうよ! あの子の事、アーラと同様に放置してた!!



 一気に目の前が真っ暗になる。




読んでくださってありがとうございます。

ブクマ・★評価も嬉しいです♪


「面白かった!」

「今後の展開は?」

と思われた方は下の☆☆☆☆☆から(★数はお好みで!w)作品への応援お願いします。

ブックマークやイイネも励みになります!


よろしくお願いします(* . .)⁾⁾

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] よんどころない事情(前)(後)が同じ内容で掲載されています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ