◆ 27・転生者の憂鬱(中) ◆
いかにも『特殊』な場所で出会った『娘』なのだろうと思えば、自然と一人の顔が浮かぶ。いや正確にはシルエットだ。
「それは……どんな人だったか聞いても?」
「彼女を説明するならば、名だけで事足りる」
当たって欲しくない予感ほど当たるものだ。
「オリガ・アデレイド、魔女じゃ」
「……って事は、あなたは『あの』呪文を唱えたって事ですよね?」
「呪文? オリガなら聖堂におったが」
聖堂――大神殿の別称だ。となれば、オリガと出会った場所は、秘密の大岩の向こう側という事になる。
「そのオリガって……」
本来のオリガを思い浮かべていたシルエットから、痛々しく横たわっていた娘の姿に置き換わる。
オリガと会う方法は二つある。一つは『呪文』で『オリガの庭』へと飛び、彼女自身と会う方法。もう一つが大神殿の奥深くに眠る娘――肉体はアーラの物と思われる――に触れる事で、オリガの精神と話す事ができるのだ。
「ちなみに、いつの事です?」
ミランダが小さい頃に家族が殺されてるっていうなら、一体いつからオリガはアーラの体をあそこに……。ってか、確か……天使って肉体がないよね?? 高次元の町でそんな事を聞いたような。天使の肉体があそこにあった事も可笑しい感じしてきた……。
私の悩みを無視して、老人は続ける。
「今から20年は昔の事じゃよ。どこでも入室許可を貰っていた故、あちこちの見回りも請けもっていた。あの日もそうした流れ作業が生んだ偶然じゃった。不思議な部屋での出会いによって、儂は前世の記憶を呼び起こされた」
20年も前からアーラはあそこに?! 天使だから老いも死にもしないのかもだけど……。
「オリガに前世を見せられたって事?」
「最初、気絶かと思ってな。駆け寄って、触れた瞬間にの。一気に……」
「……はぁ」
聞く限り完全なる事故だ。
哀れすぎる。
「それで潰された記憶やらが戻ってしまったんですね。でも、ミランダの母と元妻はどうやって合致したんです?」
顔が全く同じなわけもない。ルーファやアーラは事情が事情なので全く一緒だが、ミルカ・ヘルレヴィは人間だ。恐らくは、かつての妻もそうだろう。
「そりゃ分かるじゃろ」
愛があれば、とかいう根性論か? やはりルーファ系か!?
「光を見極めれば、大概の事は分かる」
「ヒカリ?」
「分かりやすく言うなら『勇者の御業』じゃ」
「勇者の!?!?」
立ち上がった拍子に、椅子が勢いよく音を立てる。
「なんで、勇者?! 勇者の技ってか、特殊技能は勇者だけだから特殊技能なんじゃないの?! なんで見るからに普通のお爺さんが、使えるの?!」
ミルカは溜息をつき、私の後ろで料理をしているミランダに言う。
「このお嬢様、ちょっと失礼すぎんか?」
「そういう方なんです」
いやいや、コレは驚くでしょうよ?! 大体、勇者しか使えない技を使えるなら、もう……この人が『勇者』って事にならないか?!
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