婚約解消バトル、その1。
「ベルン、婚約解消しよう?」
「は?」
「大丈夫、もう書類は出来てるんだから、名前を書けばいい」
いつも腰につけているチェーン付き財布型マジックバックから、婚約解消の書類を出す。
いつか、こうなることは分かっていたから、婚約証明書を作る時ついでに作ってもらったものだ。
「……分かった、って言うと思う?」
読んでいた本を置いて、ベルンが顔をしかめた。
思わない。思わないけれど、だ。
「思うよ。だってアリスといい感じって聞いたし」
素敵なスズメちゃんたちの噂話をなめんなよ。
彼女たちの話は、真実より真実だ。嘘も真実になる魔法つきだ。
私の頭の中の微妙なゲーム情報とも一致している!
「いい感じ……」
ベルンはそう言って考え込んだ。
ごまかそうとしてもダメだぞ! ベルン。
「それに、私がアリスを苛めているなんて噂もある。アリスとベルンが付きあおうと、愛しあおうと構わないけど、私を巻き込むのはやめて欲しい。マジ迷惑だし、面倒!」
「それは……申し訳なく思っている。夏休みが終わり次第対処しようと思っていたんだけど……」
「だけど?」
「ちょっとやりたいことがあってね」
「やりたいこと?」
夏休みが終わったら卒業パーティーだよね。
夏休み終わり次第ってことは、そういうことか?
「べスに迷惑をかけて申し訳ないけれど、これから先の面倒を無くすためだから、もう少し我慢してほしいんだけど。ダメかな?」
「不倫、ダメ、絶対!」
あ、間違えた。ダメに反応してしまった。
「不倫?」
「ゴメン、間違えた。二股だ」
「してないから」
「えー、だって、噂ではもうベルンもアリスにぞっこんだって聞いた―」
「ぞっこんだったら、毎日べスと一緒にここにいないよ」
それもそうか。