ゲームのベルンと、今のベルン。
私が、ゲームのエリザベスと同じじゃないように、ベルンもゲームのベルンとはかなり違う。
ゲームのベルンは、オレ頑張ってるのに認められない、ってタイプだけど。
目の前のベルンは、努力? 何それ美味しいの? タイプだ。
私が死ぬ思いで勉強している横で、何もしないでぼーっとしているにも関わらず、毎回テストで1位をとっちゃうような、何もしなくても、何でも出来ちゃうハイスペックで、パーフェクトな男。
それがベルンだ。
ベルンに初めて会った時は、オレ、頑張っているのにって言う片鱗はあった。
ベルンのお兄さんは、ベルンに輪をかけてパーフェクトな男で、ベルンはいつも比べられていた。
ゲームでは、そのせいで卑屈になって、認められないと嘆く。
でもこの世界のベルンは、卑屈でも、兄と比べられても気にしていない。
いつだったか、どっかのおっさんがベルンのことを出来そこないで、兄君は素晴らしいとか陰口を言っていた。
ベルンはそれを聞いてニコニコしていたから、ああいう風にお兄さんと比べられて嫌じゃないの? と聞いたんだ。
そしたらベルンは、こう言った。
嫌だよ。あんな変態と比べられるの。
アレより凄いって言われたら、より変態だってことでしょ?
変態になるくらいなら、出来そこないで十分だよ、と。
その時はまだ、ベルンのお兄さんを遠目でしか見たことが無かったから知らなかったけど、ベルンの兄は完璧なブラコンだった。
産まれた時から、兄から向けられる恐ろしいほどの愛情と、目を覆いたくなるような行動に、ベルンは兄を変態と認定したらしい。
―――――凡人は、変態にはかなわない。
そう言ったベルンの目は、どこか達観していた。