ゲームのワタシと、今の私。
私は誰か。
はい、アスルート侯爵家の長女・エリザベス、花も恥じらう十七歳です。
で、この国の第二王子・ベルンの婚約者。
五歳の時にベルンに会い、前世とゲームを思い出した。
ゲームのエリザベスは、我儘で、金遣いが荒くて、身分にモノを言わせて弱者をけなす絵にかいたようなの悪役令嬢そのもの。
エリザベスの金遣いが荒すぎて、父が悪事に手を染めるというおまけ付きだ。
ベルンとは、出会ったときに一目ぼれして、無理矢理親の力を使って婚約する。
もともと嫌われていたのに、エリザベスがぐいぐい行って、さらにヒロインに嫌がらせをすることで、断罪されるというテンプレ。
でも、今のエリザベスは、中身が日本人だった普通の女子だ。
本気で真面目ではないけれど、隣の人に習うという習性が骨の髄まで身についた、どこに出しても恥ずかしくない普通の日本人。
やれと言われば文句を言いながらもそれをこなす努力をしてしまうし、微妙な正義感とか世間体が気になるのは、普通であるためのお約束みたいなものだ。
スペック高い悪役令嬢の入れ物をもらった日本人が、日々真面目に生活をしていれば、人生に間違いはない。
評価はウナギ登り。
気がつけば、素晴らしい理想の女が出来上がる。
その上、金もそこそこしか持ったことがなく、自身の権力なんて見たこともない人間が、急にそれを使いこなせると思うか。いやない。
お金に関しては、前世・貧乏人のサガが出た。
七歳の誕生日のプレゼントと言われて開けた部屋に、ずらりと並んだ無駄なドレス。
それを見た瞬間、そのまま後ろにぶっ倒れ、記憶を取り戻した時と同じくらいの熱を出し、また一週間寝込んでしまった。
目を覚ますと同時に、父と母を私の前に正座させ小一時間説教をした。
それ以来、彼らは私にお金を使えと言わなくなった。
最近では、邸内どころか領内全部が、倹約家の仲間入りだ。
え、何を言ったかって。それは乙女の秘密。
悪役令嬢のスペックをマジマジと実感したマイエピソードの一つだ。
ベルンもたまたまその場にいて、
「せめてお茶会とパーティーのドレスだけは、毎回新しいものにしようね」
と、そっと私の手を握ってくれたのは、悲しい記憶だ。
権力については、子供のころは多少の我儘はした。
メイドたちの仕事を止めさせて遊び相手にしたり、お菓子が食べたいとか、動物が飼いたいとか、良くある子供のかわいいおねだりくらいだ。
しない方がおかしい。
それを権力と言われたら、ないわー。
権力って言ったら、あれでしょ。
印籠出して、ひかえおろーって奴。
え、シラナイ? 古い? まあいいや。
というわけで、悪役令嬢に普通の人が入ったら、スペック高いただの人。
それが、今の私だ。