おば様がやってきた。
また一週間が過ぎた。
学園は卒業試験の時期だ。
流石に学園から連絡が来たが、体調不良でごまかした。
太陽が登り切るころ、私は家を出て小屋に向かう。
昼はまだ暑いので、水に体を浸して過ごしている。
そうしないと熱が体から抜けないのだ。
毎日の日課だが、今日は朝から門の方が騒がしい。
何かと思ってみると、王家の馬車が止まっていた。
ベルンがとうとう来たのかと思って見ていると、降りてきたのは王妃様、ベルンの母だった。
慌てて両親が家から迎えに出た。
私もそちらへ向かう。
「エリザベス! まぁ、こんなにやつれて!」
挨拶もそこそこに、おば様は私を抱きしめた。
そして、むりやり馬車に引っ張り込んだ。
父と母が一緒に乗り込もうとして、護衛に止められる。
あっという間に馬車は動きだした。
私、ひどい格好なんだけど。
「ごめんなさいね。家の馬鹿どもが……」
動きだしてすぐ、そう頭を下げられて私は首を傾げる。
まあベルンがらみだろうけど。
婚約解消のこと、泣きついたのか?
「何かあったんですか?」
子供のころからの付き合いで、口調は軽くても許してもらってる。
公の場では違うけど。
「ベルンがね、部屋から出てこないのよ」
「え?」
「もう一週間になるわ。……違うわね、多分エリザベスが出て行ってからずっと、ね」
頬に手を当てて、おば様はため息をついた。
「私、外交で暫く帰れなかったのよ。帰ってきたのが先週で、今週になってベルンが学園に行ってない、卒業試験を受けないと卒業できないって連絡が来て、ようやく知ったの。エリザベスが夏休みの途中で帰ったっていうのもね」
パシンと持っていた扇を手に打ち付ける。
いつも穏やかなおば様とは思えないほどの形相だ。
「ベルンに何があったのか聞こうと思ったけど、部屋から出てこないし。学園に問い合わせたら、なんだかあっちも変なことになっているじゃない。それで貴女を迎えに来たのよ」
えー、意味わかんない。
私もう関係ないんだけどなぁ。
「おじ様は、なんて?」
「黙秘権を使っているから、今は牢に閉じ込めてあるわ」
牢? 何で? おじ様、王様だけど。
「で、ベルンと何があったか教えてくれない?」




