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Another life  作者: 神緑三春
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004 修業#1

 先までのうっそうとした森は消え、その代わりに大きな湖がそこには広がっていた。湖の周りはさっきとは違う種類の木々で囲まれているが密度が濃ゆく奥がどこまで続いているのかさえ確認できない。

 そんな場所で小さな小屋が一件立っていた。


 「すごいでしょ、空間魔法と言って現地人ではで私しか使える者がいないと自負しているわ」

 「たしかに、すごいな……。この魔法はミル師匠が作り上げたのか?」

 「いいえ、残念ながら違うのよね。昔の英雄と呼ばれた異界人たちが残した古書の中の一部に載っていたものなの。ここら辺もまたあとで教えてあげるわ。とりあえずいらっしゃい、歓迎するわ」


 小屋のの入り口をくぐるとそこには外見とは全く似つかわしくない大きな空間が広がっていた。


 「ここも空間魔法を応用されて作られた魔道具でこうなっているの。そしてここがあなたの部屋よ」


 リビング横の一室を貸してくれるようで中にはベットにタンスや机と簡素な部屋だった。ただし広さは十二分にあり現実世界の一人暮らししている部屋よりも少し大きい。


 「一応数日に一回は掃除をしていたから綺麗なはずだけど埃とかが積もっていたらごめんなさいね。それとこの部屋はクオンくんにあげるから好きなように家具とか置いちゃっていいわよ。でも恋人を連れてくる時だけは一言頂戴ね?」

 「恋人がいたら一人森なんかかいってないっての。にしても修業が終わった後でもここに住んでもいいのか?」

 「ええ」


 その後はミル師匠から各部屋と施設の説明を受けた。基本的に入っちゃダメな場所はないようだがその中に自分の部屋を含めるのはいかがなものかとは思うがな。


 「さて、家の紹介は終わったし魔力の訓練は明日からするにして先に魔法や雑学お勉強からしましょうか」


 庭、というよりもほとりに出る。


 「最初に魔法って何だと思う?」

 「魔力を使って起こる超常現象じゃないか」

 「確かに認識的なものは間違ってないわ、でも詳しくは違うのよ。魔法はね、魔力に言葉、いわゆる言霊を合わさることで出来上がる奇跡のことなの」

 「その言葉通りならば考えてることすべてできるように聞こえるんだが」

 「基本的に再現可能よ、ただしそれ相応の魔力が必要になるから世界を消滅させるなんて言う無茶な魔法は、世界中の現地人の命を犠牲にしてかなうかどうかって感じね。それに強力な魔法ほど言霊を乗せる量は多くなり乗せることも難しくなるから詠唱自体も無茶なものになるわね」

 「なるほど、一つ質問があるんだが同じ魔法を使っていくと消費する魔力が少なくなるのを感じるんだが、詠唱は短くならないのか?」

 「いい質問ね。結果だけ言えば残念ながら詠唱は短くならないわ。言霊を乗せる効率がよくなるだけで言霊自体は変化しないの」


 そうなってくると異界人同士の対人戦があった場合はどんな魔法かばれるのか、いや、リリーが無詠唱のようなものもあるって言ってたし何か方法があるのか?。


 「ふふっ、ひとにばれちゃうなぁって顔に書いてあるわよ?。人殺しはするようには見えないけれどどうしようもないとき以外はしないようにね。現地人は異界人と違って命が一つしかないから」

 「ああ、いや、知性のある魔物だったり襲われたりしたらと思ってな」


 さすがにイベントでの対人戦のことを考えてたなんて言えないな。


 「そう?。とりあえず安心してちょうだいな。私が解決方法を教えてあげるわ。ただ今は先に雑学の話を続けましょう」


 そういうとホワイトボードにミル師匠は何やら書き込み始める。


 「まず魔法は元々神様たちが使っていた神術を基礎として開発されたものなの。大本を開発したのは勇者と呼ばれる原種の一人ね。それまでは魔法はなくて魔力を媒体として様々な事象を起こす魔道具が主流だったらしく、魔道具はその時期が一番栄えてたそうよ。そのあと魔道具は魔法の開発にともなって反比例的に緩やかに衰退していったらしいわ。だから古代の魔道具は貴重で性能がいいの。寄り道ついでにもう一つ、神術という神が作ったものが大本となったせいなのか魔法が使えない種族だったりは疎まれる傾向があるわね」


 馬鹿よね、と苦笑い交じりに話してくれるミル師匠は少しつらそうな顔をしていた。


 「さて個人的な暗い話は置いておいて、魔法の発展も途中まではうまくいっていたの。だけれども個人が自由にできる魔道具より大きな力を持つと人々は争いを起こし始めちゃったの。よくある話だけどこの争いが馬鹿にできないレベルで大きなもの、このベラすべてを巻き込んだ崩壊と呼ばれる大戦に発展していったのよ。そしてその結果魔法すらも伝える人や伝記が失われて衰退していって今がある、といった感じがざっくりとした魔法の歴史ね。因みに崩壊は約200年前の話よ」

 「そしてそんな衰退した中でミル師匠の魔法の技術はとても珍しい……って感じか」

 「そうゆうことね。ただしとてもというより国宝級にだけれど」


 ウィンク一つするミル師匠が無性に似合っていて、今の話を含めてふと歳が気になったがハイライトの消えた目をされたためあわてて考えるのをやめる。

 読心術でも持っているのか?


 「今日の雑学はここまでにしておいて魔法の練習に移っていきましょうか。さっきの戦闘を見ていたけれど、感じる、動かす、纏わすはできてるようだったわね。もう一度してもらっていいかしら」


 言われた通り俺はスライムから粘度の高いヘドロにランクアップ?した魔力をゆっくりと動かしていく、その後に大鎌に纏わせて魔法を発動させた。


 「うんうん、魔力を扱い始めたばかりにしては上出来よ。そこまでできるのならば次は循環を覚えましょう」

 「ん?、循環させてるから動かせてるんじゃないのか?」

 「確かにそうなんだけど、試しに魔法を使うように魔力を動かした後に魔法は使わずに魔力を戻してみてくれない」


 腕に魔力をためてそのまま胸へと返す、すると少しだけ倦怠感を感じる。

 ステータスを出して確認してみるとMPが3減っていた。

 ちなみにだがこの世界ではHPやMPなどの表記は視界に出ない、もしかしたら出るようになる称号もあるかもしれないが。


 「神表、異界人的に言えばステータスかしら、をその様子なら見てるからわかると思うけど普通練習しないと魔力を動かしたときに少しだけ外に漏れちゃうものなの。それを抑える、またその抑えた状態で体全体に魔力循環を継続させることが最初のステップよ」

 「最初の割には大きなステップだな」

 「でもこれができなきゃこの後の全部できないのも事実だから。それにクオンくんならできるって信じてるわ」


 にこやかに話すミル師匠はなぜそこまで俺を信用するのかはわからないが、男として綺麗な女性にそこまで言われるとやる気が出てくるから不思議なもんだ。


 「とりあえず抑えるところからだな」

 「そうね。感覚としてはボルトを締める感じね。ゆっくり魔力を流して漏れる場所があればそこが漏洩点だからそこのボルトを締める感じに集中すればうまくいくと思うわよ」


 とりあえず日本人らしく座禅を組んで集中してミル師匠が教えてくれた通りにまず右腕に集中して魔力を少しずつ流していく。

 上腕、二の腕、手の甲、指の先と胸から順番にゆっくりと流していくと指の第二関節で外に漏れる魔力があることに気づいた。

 そしてそこのボルトを締めるように力を入れる、そうすると指の第二関節での魔力漏洩はなくなるがその代わりに別の場所から漏れてしまう。

 そうして三か所ほど締めたところで漏洩が無くなり完璧な循環ができていた。


 「とりあえずやっと右腕ができるようになったか」

 「でも、早い方よ?。正直もっとかかると思っていたもの」

 「ていってもミル師匠のおかげだけどな」


 そういってさっきステータスを見ていた時に増えていた称号をミル師匠に画面を可視化させて見せる。


 □----------------------------------------------------------------□


 ・千色の魔女の弟子

  ミネルバの弟子になった者の称号

  魔力の扱いや魔法系の称号レベルが上がりやすくなる

  魔法の取得制限が甘くなる

  特殊な魔法を習得可能になる


 □----------------------------------------------------------------□


 「……本当に魔法を主力には考えないの?」

 「確かにもったいないが最初に決めたことを曲げるとろくなことにならないってのは経験済みだからな」

 「そう、残念。でもそうじゃないと面白くないわね、ますますクロネくんを気に入っちゃったわ」


 そうミル師匠がほほ笑んだと同時に開いていた称号の名称が変わった。


 □----------------------------------------------------------------□


 ・千色の魔女の愛弟子

  ミネルバのお気に入りの弟子になった者の称号

  魔力の扱いや魔法系の称号レベルがとても上がりやすくなる

  魔法の取得制限がとても甘くなる

  特殊な魔法を習得可能になる

  特殊な上位種族になることができるようになる


 □----------------------------------------------------------------□


 俺の表情がひきつる。


 「こんなふうに神から与えられる称号が目の前で変わるとなんだか照れちゃうわね」


 称号ってこんなふうに変わるんだななんて現実逃避しているとそんなことをミル師匠が言ってくる。


 「ふふふ、でもこれでもっと効率よく修業できるわね。それじゃあ続けて頂戴、私は夕飯の支度をしておくわ。あと称号はあくまで補助でクオンくんの努力もあってこそよ」


 楽しそうな足取りでミル師匠は小屋に帰っていった。

 ちなみにだがベラでも空腹は感じて、食べないとマイナス補正、いわゆるデバフがかかる。


 「次は左腕をしてみるか」


 呆けてても仕方ないので信用してくれたミル師匠に応えるべく練習を再開する。

 右腕でコツをつかんだのか称号の効果がすさましかったのかその後の全身への循環練習はすんなりといった。

 といっても時間はかかっており気づけば夕日が湖の奥の森に沈んでいくところだった。


 「あとはその循環を習慣付けたらいいだけだからここから先は日々の練習ね」


 夕飯の準備が終わったのかいつの間にかエプロンを着たミル師匠が後ろに立っていた。


 「もう感じてるかもしれないけど循環は身体能力の向上にも繋がっているのよ。簡単な原理を説明すると循環している魔力が体の機能すべてを活性化させる感じね」

 「確かに体が軽いなとは思っていたがそういう効果もあるんだな」

 「そう、魔力を扱うっていうことは魔法を使う使わないにせよ重要なことの一つなのよ」

 「使えるようになって分かったがこれは大事だな、改めてありがとうな」

 「どういたしまして、さてと、冷める前にご飯を食べちゃいましょう。それとも循環の練習で疲れちゃったかしら?」

 「いや、大丈夫だ。メニューは何なんだ?」

 「キノコのシチューよ、珍しいミルクが入ったからきっとおいしいはずよ」


 そんなやり取りをしつつ今日の修業は終わった。

 お風呂屋トイレもそれ用の魔道具があり外と変わらなかった。


 「おやすみ」

 「また明日ねクオン君」


 久しぶりにおやすみなんて言ったな。

 少し家より硬いベットに入ると違和感があって眠れないかと思ったが体が疲れていたのかすぐに眠気が来た。

 俺はその眠気にあらがうことなく身を任した。

 ちなみにミル師匠の手料理は美味しかった。




 翌朝は朝日のまぶしさで目を覚ました。


 「なんだか不思議な感じだな……」


 寝て起きたときの頭のぼんやりした感じも現実と同じで違和感はなかった。

 ほかのゲームでは味わったことのない現実そのものの感覚に関心のような不安のようななんとも言えない気持ちになる。

 ただ一応現実の脳は寝ていることにはなっていないらしいためVRで寝たからと言って現実で疲れが取れるというわけではないらしい。


 コンコン


 ぼんやりとベットに座り窓から外を眺めていると部屋にノックの音が響いた。

 

 「おきてるぞ」

 「おはよう、起きてたのね」

 「おはようさん、朝日のおかげでな」

 「ちゃんと日当たりのいい部屋でよかったわ。朝ごはんができてるから食べましょう」


 ミル師匠はそういうとにこりと笑って部屋から出て行った。

 そのあといつの間にか用意されていた動きやすい恰好に着替えてリビングに出て焼き立てらしいパンや鮮度のいい野菜のサラダを食べた。

 現実よりまともな食事をしてる気がしなくもない。

 食後のコーヒーのようなものを飲んでいる間にステータスの確認をしておく。


 □----------------------------------------------------------------□


 ◇ステータス◇


 名前:クオン

 種族:人間族


 Lv:4→5


 HP:600/600 (4)→650/650 (4)

 MP:425/425 (8)→550/450 (10)


 STR 17(17)→19(19) 

 DEF 4(4)

 INT 12(12)→13(13)

 RES 4(4)

 DEX 20(20)

 AGI 10(10)

 LUK 6(6)


 SP 5→0


 ◇種族称号◇

 ・器用な不器用


 ◇特殊称号◇

 ・千色の魔女の愛弟子


 ◇武具称号◇

 ・嘆きの亡者


 ◇装備中称号◇

 ・大鎌を扱い始めた者 Lv3

 ・魔力を扱う者 Lv1 NEW

 ・闇魔法を扱い始めた者 Lv4

 ・呪死の隣を歩む者 LV1

 ・気配を微かに読む者 Lv2

 ・体術を扱い始めた者 Lv1 NEW


 ◇通常称号一覧◇

 ・大鎌を扱い始めた者 Lv3

 ・魔力を扱いう者 Lv1 NEW

 ・闇魔法を扱い始めた者 Lv3

 ・呪死の隣を歩む者 Lv1

 ・群れ狩りする者 Lv1

 ・気配を微かに読む者 Lv2

 ・体術を扱い始めた者 Lv1 NEW


 □----------------------------------------------------------------□


 ミル師匠の称号もあってか魔力を扱う称号が正直気持ち悪い速さで成長している。

 その成長でLv10で打ち止めだった魔力操作の称号が進化していた。

 あとはゴブリンもどき、のちに聞いたところによるとゴブリンリーダーと戦った時に闇魔法が少し伸びたのと体術系の称号が手に入ったぐらいか。


 □----------------------------------------------------------------□


 ・魔力を扱う者 Lv1

  魔力を扱うことになれてきた者の称号

  レベルを上げることで魔力の扱いの扱いがうまくなっていく

  

 ・体術を扱い始めた者 Lv1

  体術を扱い始めた者の称号

  レベルを上げていくことで体を使った威力や精密性などが上がる


 □----------------------------------------------------------------□


 「さてそろそろ二日目の雑学の時間と行きましょうか」


 コーヒーもどきを飲み終わって一息ついたタイミングで何処からかホワイトボードを取り出してくる。


 「今日は昨日少し言った原種について話していきましょうか」

 「勇者だっけか」

 「そう、でも原種は勇者一人ではなくて他にも勇者含めて合計7人いるの。勇者、賢者、聖剣士、法王、黒騎士、影者、錬金術師の七人ね」


 そういいながらデフォルメされたそれぞれ七人を描いてゆく。


 「勇者は昨日言った通り魔法の基礎を作ったりほかの技術の基礎を作ったりとオールラウンダーな天才ね」

 「もしかして勇者が基礎工事をして他の六人がその上に物を積み上げた感じか?」

 「察しが良くて助かるわ。賢者は攻撃系統の魔法、聖剣士は攻撃的な武器の扱い、法王は防御や補助の魔法、黒騎士は防御や補助的な武器の扱い、影者は裏工作や暗殺、錬金術師は生産系といった感ね」


 ミル師匠は七人の上にそれぞれ役職を振った後、横に角の生えたいかにも悪者といった風貌の何かを描く。


 「その原種たちの偉業を話しましょう。といっても簡単な話で魔物の王、いわゆる魔王を初めてその原種七人で討伐したって話なのだけれどね」

 「初めてってことは魔王は数人いるのか?」

 「数人というよりも数十年に一度別の人物として復活するのよ、種族魔王がね。その時に原種七種も種族としてその時に一番ふさわしい人に割り振られるから、代々魔物に脅かされる者たちはその力で抵抗してきたのよ」

 「もし魔王に異界人がなれたとしたら死なない魔王が出来上がらないか?」

 「そこは一度死ねば魔王という種族は沈静化するから大丈夫よ。現に過去に一回そういうかとがあったけれど一度倒されると前の種族に戻っていたもの」


 ゲーム的に言えばイベントなどで誰かが鳴る感じだろうか?


 「ちなみに、この世界の宗教はそんな原種たちの活躍があったためか基本的には勇者とだれかを祭ることがほとんどを占めているわ」

 「ミル師匠はどこかの宗教に入っていたりとかするのか?」

 「私は何も崇めてはいないわよ。神の存在や原種たちの偉大さはわかるけれど、崇めるといったほどでもないわね。逆にクオンくんはどうなの?」

 「俺もミル師匠と似たようなもんだな。あっちの世界じゃミル師匠と同じ考えだし、こっちだと初めてそんなこと聞いたしな」


 こっちじゃ神様(運営)なんか信じたところでなんていうメタな考えもあるしな。


 「ともかく魔法の歴史はその原種が原典でだいたい1000年前とは言われているわね。といったところで雑学は終わりにしましょう。午前中に関しては私は少し準備があるから昨日の続きをいて居て頂戴」


 そういうとミル師匠は家の中へと入っていった。

 すっぱり飛ばして結果だけ報告するなら意識をすれば循環をもれなく完璧にできる程度には仕上がっていた。ただし別のことをしながらする循環は引っ掛かりをすぐに起こしてしまい無駄な魔力消費をしてしまった。

 お昼を食べて少し休憩をとると収集していた疲れがどっと押し寄せてきて体のだるさと知恵熱のような頭痛が襲ってきた。


 「いってぇ」

 「もう、集中しすぎよ」


 すこしソファーに横になるとミル師匠が魔法で冷やしたタオルをおでこにおいてくれた。

 そして少し怒ったような口ぶりとは逆によく頑張りましたと言わんばかりな優しい目でこっちを眺めていた。

 30分ほど体と脳を休ませたあと午後の修行に取り掛かった

 

 「これ使ってちょうだい。流石にあなたの大鎌で手元が狂うと危ないから」


 そういってボードと同じようにどこからともなく取り出したのは木でできた練習用の大鎌だった。


 「普通の木じゃなくて魔木のトレントの幹から切り出したものだから丈夫で魔力が通りやすいわよ。といっても今は緩衝の魔法を付与してるから攻撃力はないに等しいのだけれど」


 そういって受け渡された練習用の大鎌を受け取り軽く振るう。

 いい感じの重さでこれなら嘆きの大鎌と重さが差がないから狂うこともあんまりないだろう。


 「午後からはその大鎌を使って循環しながらの打ち合いになれてもらいましょう」


 ミル師匠はそういうと自分の持っていた杖を構えた、俺ももらった大鎌を構える。


 「最初はゆっくり打ち合いましょう」


 そういうと軽いチャンバラを始めるように「えい」「とぉ」と気の抜ける声とともに杖を打ち付けてくる。

 俺もそれにあまり余裕はないがゆっくりと大鎌を打ち合わせる。

 木と木がうちあう独特な音(あとミル師匠の気の抜ける掛け声)が当たりに響く。


 「ほら、足のほうがおろそかになってるわよ」


 その後十合ごとに少しづつ打ち合いの速度を上げていったが、少し速度を上げたとたんに俺は循環や動きががおろそかになっていた。


 「わかっちゃいたが、難しい、な!」

 「無理に喋らないの。ほらあたちゃった」


 こん。と頭にミル師匠の杖が当たる。

 勢いはまだまだないので本当に軽く当たる程度なのが先の長さを表していた。


 「ほらほら、もう一回やるわよ」

 「望むところだ」


 その後十数回打ち合いをした。

 少しずつ伸びてはいたがやっぱりといっていいか目覚ましい伸びなんていうものはないまま修業は続いていった。

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